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どう思ってるか知らないけどね。 オレはオレなりに、 オマエのこと想ってるワケ。 3日間でオレがなにを考えたか当ててみてよ 目が覚めて、の笑顔をみたカカシは自分のおかれている状況に非常に驚いた。もうこれはほぼ無意識だ。 自分の本能レベルでの習性に恥ずかしくなって、その場を茶化してしまうしか他に手が見つからない。 「・・・・・キスしていい?」 「はぁ?!!!いいいいい、いいわけないでしょ!!」 「ははは、が雰囲気に流されない娘でよかったよ。」 「オイ、コラ。・・・・・・っていうかなに、そんなに疲れてたの?」 心配そうに聞くの問いにはあえてなにも答えずに、伸びをしながらあっさりと距離をとる。 「ごめんな?あとは家でゆっくりするよ。」と熟睡したのが効いたのか、随分と軽くなった身体でその場を去った。 久しぶりの休暇だったが、どうもと一緒に過ごす気にはなれず 結局その日は家で1人たまった家事をこなしながらだらだらと過ごした。 気持ちがぐちゃぐちゃし始めた今はそれがいい。 いつの頃だったか、の隣でとる睡眠が普段と比べ物にならないほど 深く、良質なものになっていたのには自分でも驚いた。 目を閉じるとわずかに香るの匂いに、カカシはあっという間に眠りの世界へと誘われた。 なにもきこえない。 なにもかんじない。 まるで母親のお腹の中にいる胎児のように、その時間だけは忍を忘れて眠った。 だから今日もいつの間にか、の肩で眠っていたのだと思う。 たいして疲れている意識はなかったが、最近再び身近になりはじめたの存在に自然と身体のほうが反応したのだろう。 ぼんやりと肩の感触を思い出しながら、それに引きずられるように過去が次々とよみがえった。 が時々痣をつくって現れるようになったのはいつのころだったか。 本人に問い詰めても、演習でミスったとかその辺で転んだとか、忍として致命的なほどにヘタな言い訳しか出てこなかった。 だったら、とオレがちょっとさぐればすぐに本当のことなんて分かるの、本気で気づかなかったワケ? 「あのさぁ、アイツに関わるのヤメテくれない?」 多分、に危害を加えているであろう中心人物を呼び出して 面と向かってそう告げると、返ってきたのは 「じゃあ代わりに私をかまってくれなくちゃ、でしょう?」 計算された媚びるような視線に、女を前面に押し出した身体のライン。 全体を包む匂いまでもが甘ったるく誘うようで、それが今のオレには全てが嫌悪感でしかない。 こみ上げる吐き気がしそうな気持ちの悪さをこの時のオレには傍観する余裕もなく、ありのまま本人にぶつけた。 代わり?オマエがの代わりだっていうの? 思い違いも甚だしい目の前の女に、正直な今の自分の気持ちを隠そうともせず伝える。 「1回組んだだけのくの一がよく言うよ。」 「の代わりなんてこの世に存在しないから」 「ねぇ、オレのなにに惹かれたの?名前?階級?実績?外見?あ、それともこの目かな。」 「はやく答えろよ。」 相手に答える隙も与えず、わずかな息継ぎだけで追いつめるように全力の殺気と共に一気にまくし立てると 小さく謝罪の言葉を口にして震えながら、逃げるように女はオレの前から去っていった。 ガキだったから、そうとう無茶なことをしたと思う。 そういうやり取りが何度か続くと四代目からもう少しうまくやるように注意をうけた。 どこから沸いてくるのか、オレの上辺に釣られて次々と群がってくる女たちは 相手にしようがしまいがどっちにしろ1度はその興味はに向かうのだった。 何度か経験しているうちに誤魔化しながらうまく立ち回れるようにはなったが、それでも湧き上がる嫌悪感はつねに自分の中にあった。 そっとしといてくれたらいいのに。カカシが陰で沈めようとすればするほど、その分やっきになって女たちは騒ぎ立てた。 がこんなやり方で守られてるって知ったら、どう思うかな。 あー・・・・そもそもオレに係わんなきゃこんなことにはならないのか。 それでもの肩で眠る時間は、心地よかった。 気持ちのバランスが取れないほどに、オレはオレなりにを大切に思ってた。 どうやったらとのほんのわずかな時間を守れるか、考えれば考えるほどそれが到底困難で貴重であるか思い知らされた。 オレはただ、の隣で心地よく眠りたいだけなのに。 どうしてみんなそっとしておいてくれないのか。 どうしてただ言葉をかわして、笑いあって同じ時間を一緒にすごすだけのことがこんなに難しくなっているのか。 難しくしているのはオレなのか? 守ろうとオレが躍起になるほどに、周りもそれ以上に加熱していく。 もうオレにはどうにも出来ない。諦めたのと暗部入りが決まったのは、図ったように同じだった。 救われたのか、突き落とされたのかも、もうよくわからない。 なんだかあの頃のオレは全てのものが気に食わなかった。 求めずにはいられない、こんなに必死になってる自分も。 それをすべて知らないも。 暗部入りを告げようと突然現れたオレを部屋にあげて、嬉しそうにあれこれ話をする。 の為とはいえ、そっけない言い方しかできない自分が、悪いことをしているようでやるせない。 だけどどうでもいいと完全にを突き放してしまうこともまだどこかためらっていた。 「そういうワケだから。もしオレが暗部面つけてない時に会っても話しかけてくんなよ。」 そして先ほどから本人は自然にしているつもりだろうが、誰にやられたのか左腕の動きが少し鈍い。 オレの所為でこんなにひどい目にあってるってなんで言わないんだよ。 痛いなら痛いって、我慢せずにオレにすがって泣けよ。 助けてくれって言えよ。たのむから。言ってくれよ、。 平気そうに、なにもないようにして笑うを見ていてオレの中で唐突にそれは訪れた。 もう、ダメだ。窓ガラスを割るように、その笑顔を心の中で叩き割った。 「なぁ。オマエ、オレの事スキなの?」 唐突にそう言うと、はうんとも違うとも言わなくて。 この場を誤魔化したかったんだろうがが曖昧に笑うと、なぜか無性に腹がたった。 こんな時まで笑うなよ。 「ジョーダンでしょ?」 吐き捨てるように出た言葉が、こんなにも冷たくて渇いているのに自分でもびっくりした。 泣けよ。傷つけられたって、もっともらしい顔してオレの所為にしてみろよ。 イライラするんだよね、オマエのへらへら笑う顔みてると。 オレのこと可哀想とか思ってんの?どうせガキのころからの付き合いだからって惰性で一緒にいてやんなきゃとか思ってんだろ? 同情だろ?なんだよ、なんなんだよオマエ。 文句の1つでも言えよ。 浴びせるようににそう告げた。 止まらない。オレの中でのコイツは両極端だ。 すっごく大事で、すっごく守りたい。 のに、どうしていいかわからなくなってどうしようも出来なくなるまで傷つけた。 黙っているの顎を掴んで、無理矢理口付けると思い切り噛み付かれて口の端が切れた。 「・・・イッテーな。」 「冗談にしたのはカカシでしょう?」 どうして、オレなんか嫌いだって言わないんだよ。 そう言えばお互いラクになれるっていうのに。 「アホだなァ、オレ。」 見下すようにをみて、突き放すように言った言葉たち。何にも言えないようにしたのは自分なのに。 迷惑だとか、関係ないとか。なんでオレ、あんなことが言えたんだって今では不思議に思うくらい。 もっと違う方法があった、なんて今じゃもう遅すぎる。一旦口に出したら、もうなかったことになんか出来ない。 嫌いになんかなれなかった。 ラクになりたいのは自分だった。 は必死に戦ってくれていたのに。逃げたのは自分だ。 それを全部の所為にして。 暗部入りを命じられて、まっさきに浮かんだのは誰でもないの顔だった。 家族みたいに大事な。 白い牙の息子としても 写輪眼のカカシとしてもオレをみない唯一の存在。 壊してしまいたい、これ以上誰かに踏みにじられるくらいなら。 壊したくない、オレの世界に1つだけのつながりだから。 結局、どう足掻こうとあの時のオレは視野が極端に狭くなりすぎていた。 だからキライになって欲しかった。いや、違う。 それ以上にどれだけ傷つけても、他者に抱いた憎しみをぶつけても それでもはオレを見捨てないでいて欲しい、なんて。 1人ぼっちになったあの時みたいに、 ならどんなことがあってもオレの手をにぎっててくれると思い上がっていたんだ。 血にまみれたオレを、なら黙って抱きしめてくれると。 なに言ってんの、って自分で笑って 今さらスキとかキライとかそういう話じゃないよねって、言えていればなにかが違ったのだろうか。 そうじゃなくてもあの後すぐに、なーんてね。ってなかったことにしてしまえばよかったのだろうか。 でもそんなの、今の自分だから言える言葉だ。 オレはずっと心の底ではが怖かった。 いつになっても助けを求めないに腹がたった。 自分以外の存在が、絶対的ではない未来が、読めないの心が。 なんで笑っていられる? なんでそばにいてくれる? 優しくするのは、あったかいのは なぜ、 そんなのずるい。わからない。 羨ましい 怖い 苦しい こんなのもう、イヤだ。 いつのまにかを羨ましく思って妬んでしまう自分を消したかった。 を憎む気持ち以上に、が欲しくてめちゃくちゃにしてしまいそうな自分に 若かったオレは自分勝手に納得してそれなりの理由をつけて、遠ざけた。見捨てられて傷つく前に。 だっていつかオマエもあぁいう目でオレを見るんだろう? 手を離して届かないところに行ってしまうんだろう? だから幼なじみなんてぬるい関係、こっちから捨てた。 繋いでいた手が、急に恐ろしいものに思えて自分で手を離してしまった。 もう全部がどうでもいいって、割り切ってしまえない自分が醜くて汚く見えた。 求めるばかりで、オレはに苦痛しか与えられてないのではないかというのは考えるだけで恐ろしかった。 「どっちにしろ、オレとオマエはもう関係ない。」 持ってたときも苦しかったのに。 「だからさ、オマエと知り合いだって思われたら迷惑なんだよ。」 捨てたらもっと、苦しくなった。 苦しくて、苦しくて ねぇ、なら気づいてたかな。 暗部になるって言いに行ったあの日の夜のオレは随分とおしゃべりだったと思わない? 「じゃあな。もうほとんど会うこともないだろうけど。」 必死に隠してたけど、オレの手はずっと震えてた。 との関係がなくなってしまった明日からはどうやって生きていこうって思うと、正直怖かった。 結局バカなオレは捨てきれずに、暗部になってから何度か限界を向かえの優しさにすがった。 あんな捨て台詞まで吐いておいて、突然現れたオレのことをは戸惑いながらも無理に追い出すことは1度もしなかった。 の膝で眠る時間は泣きそうなくらい、オレはちゃんと人だった。 任務の合間に遠くから見るの姿 その表情が優しく笑っていることに、オレはどこかほっとしていた。 こうしている間に四代目が死んで、オレの世界はまたひとつ傾きを増した。 結局オレは誰も護れない。 忍なんてものは、誰も大切に思ったらいけないのだ。 イブキさんが殉職していたのを知ったのもその時だった。 もう随分と、昔から離れたところに来てしまっていると思ったけど、なんだかもうそれも結構どうでもよかった。 『道をそれちゃいけないよ。』 そもそも正しい道ってなんだ? オレとがよりそう道はそれるどころか、随分昔に迷子になったきり見つける気にもなれない。 そうしたのは自分だけど。 繋いでいた手の感触も、ぬくもりも、クナイを握る感覚とどちらがしっくりくるか、記憶をたどっても思い出せなかった。 それでもまだ自分の中では、出逢ったときからずっとが大切な存在であることには変わりはなかった。 それは今でもずーっと、そう。 洗濯機の中で衣類が渦の中をぐるぐるとしているのを見つめながら、 どうにもできないぐちゃぐちゃな自分の気持ちを吐き出した。矛盾だらけだ。同じところを行ったり来たり。 久しぶりに思い出したような気がする。 考えないようにしていたら、自然と忘れていたことだったから。 「3日間でどうにかなると思う?」 その答えはオレの中にはなくて、 きっとの中にもないんだろうと思った。 今さらはオレにどうしてほしいんだろう。というか。 「オレは・・・・・どうしたいんだか、ね。」 カカシ先生、語り。 過去と現在を行き来しまくってると自分でも時間軸を見失います。ダメじゃん。 |