どこか、

見つからないようにしていたような気もするけど。


それでも、こうなったからには知りたいって思う。






探してもさがしても、その理由がみつからない。5日前のずっと前から









『まずはデートでもする?』


そういい残して去っていったカカシのいう通り、
私は家で大人しくカカシが迎えにくるのを待っていた。
言い出したのはこちらなのにさっさと主導権を握られて、
そのうえこうして大人しく待っているのも滑稽に思えてしかたがない。

そんな状況をさらに滑稽な気分にしているのは、



なにちょっと浮かれちゃってんの・・・・私。


そう、先ほどからカカシがくるのを今か今かと待っている自分がいる。


そしてその気持ちを消そうとすればするほど、本人の思惑を外れて大きくなっていくことに
もはや滑稽を通りこしてなんだかちょっと笑えてきた。


・・・・バカみたい。


カカシと2人で出かけるのはどれだけ振りだろう、とぼんやりと映る天井を見上げながら
気づけばの思考は自然とそちらへ向いていた。



『カカシー!!』


あの頃は、呼べば当たり前のように優しい笑顔で返事をしてくれた。
めんどくさそうにしながらも、しょうがないな、なんて言って私の手をとってくれるのが


そんな毎日に疑問すら浮かばないほど、日々が当然のようにめぐっていた。






そしてやはり記憶がいたるのは、
大きくなってからの自分たち。

そこにたどり着くと、
引き返せないと分かっていながら、昨日の夜からどうしても逃げ出したいような気になってくる。

先ほどまでの浮かれようはどこへいったのやら。


「・・・・・やっぱり、バカみたい。」




「だーれがバカみたいだって?」


不意に後ろから聞こえてきた声に、自らも忍という立場を忘れて思わず肩を揺らしていた。


「ひっ・・・」


声を上げてしまった、と思った。
ため息をついて曲がりなりにも忍のくせに、と
今にもカカシのお小言が始まるのではないかと思ったのだ。

は過去にそうしていたように、振ってくる言葉にそなえて
下を向いて出来る限りその身を小さくした。



しかし、一向に冷たく吐かれる息と共に振ってくる
槍のような言葉たちは落ちてはこなかった。


そのかわり


「あー・・・・悪い、びっくりさせたね。」



振り向いた先には、優しく笑うカカシがいた。


「ううん、あの・・・・ごめん。あたしも忍のくせに、その」



言葉がうまく出てこない。



きっと見間違えたんだろう。

目の錯覚かもしれない。



さっきまでの回想で、脳みそが過去にいっていたことが見せた
都合のいい解釈だと思うことにした。


「そ、それよりどこ行く?!カカシ、今日は休みなの?」


なぜか焦るにカカシは首をかしげながらも、
その問いに答えることにした。


「ん、今んトコ任務は入ってないんだけど一応待機なのを抜け出してきたんだよね。」

「あ・・・そうなの?なんかごめんね、無理矢理誘ったみたいで。」


もはや条件反射のように下をむき謝るに、
カカシはその上でそっと苦笑いを浮かべながら、子どもをあやすようにその頭に手をおいた。



それは、昔

少なくともは無邪気に笑い、そして今よりもずっと素直に涙をながしていたころに
自分が少女だった彼女を落ち着かせる唯一の方法だった。




「なーに言ってんの。誘ったのはオレでしょ。」




ふっくらと笑う目元に、頭の上の確かな感触。

はそれがどこか都合のいい夢の延長のように思えて、
すぐには反応を返せなかった。


「う、・・・うん。あ、ホラ!なんかあたしすぐに謝っちゃうのが癖っていうか、ねぇ?」

「ねぇ、って。それオレに聞いてどーすんの。」


ま、をそーいう風にしたのはオレなんだろうけど。



「じゃあー・・・近くの公園でも散歩する?」


言葉がとぎれるのが怖くて、
向き合った間に流れる空気が重くなるのがイヤで、

咄嗟に私はそう口にしていた。




「わ〜〜懐かしい!」

忍者なのに、ゆっくり道を歩くというのも変な光景だとは思ったが
カカシと2人久々にそうしているのも悪くない、と思った。


「昔はよく日が暮れるまで遊んだよねぇーが。」

「なっ?!カカシだって遊んでたじゃん!!・・・・あたしがつき合わせてた感はあったけど。」

「あははは、でもまぁーといると年相応な気分になれたからあれはあれで楽しかったよ。」

「でしょう?カカシったらいっつも年上のお兄さんぶって中々はしゃがないんだもん。」

「年上なのは事実でしょーよ。っていうか、が危なっかしすぎてなるべくしてそうなったとオレは思うケド?」

「うっ」


勝ち誇ったような笑みを浮かべるカカシに、
事実すぎてそれ以上言い返せない。

言葉につまった後、不意に目があって
懐かしさがつまった風に誘われて、2人クスクスと笑った。


「オマエと初めて会ったのもココだったよねぇ、たしか。」

「そうだっけ?」

「そーだよ、お互い親父に連れられてさ。」









久しぶりの休日を迎えた父親に、
今日はどんな忍術を教えてもらえるのかと、心躍らせていたカカシ。


「ねぇ、父さん!今日はなにを教えてくれるの?こないだ言ってた土遁?」

「いや、行けばわかるよ。」


そう言って手を引かれ、連れてこられたのは
いつもの修行につかっている演習場ではなく。


近所の公園だった。



「サクモさん!」

「あぁ、イブキくん。申し訳ない・・・・少し遅くなった。」

うやうやしく謝るサクモに、イブキと呼ばれた人物は慌てて否定する。


「いえいえ!構いません、お互い休みの日ですし。まぁ、俺なんかはさっさと嫁に追い出されましたけど。」

ははは、と明るく笑うその表情とそのくだけた話し方から
父よりも随分歳が下なんだろうとカカシは思った。


「あ!この子が自慢の息子さんですか?」

急に向いた視線に、オレはドキっとして思わずつないだ手に力が入った。


「いや・・・その、・・・・愚息ですが。」

「なにをおっしゃいます〜〜あんなに嬉しそうに話てたじゃないですか。」


父さんが、オレの話を?


どちらかというと寡黙で、
他人とのコミュニケーションも必要最低限な姿をいつも見ている所為か
自分の父親なのに、そんな姿は想像もつかなかった。


「いや・・・その。」

「キミがカカシくんだねー。いやーやっぱサクモさんに似て幼いながらキラリと輝くものがありますよね〜。」

膝をついてちょうど目線が同じになると、向けられた笑顔は益々まぶしかった。


「こんにちは。」

「こ、・・・こんにちは。はじめまして。」

「おぉー!!!その上礼儀正しいなんて。少しはにも見習わせたいところだな・・・。」

「イブキくん」

「あ、すみません。また俺やっちゃいましたねー。
 ははは、父親になったんだからちょっとは落ち着けってアイツにいつも言われてるんですけど。」


嫁には内緒にしといてください、と
いたずらっぽく笑う姿は傍からみても好青年だ。


「カカシ、先日の任務で一緒だったイブキくんだ。」

「お父さんにはお世話になってます、よろしく。」


空いているほうの手をとって、半ば無理矢理に握手をした。

オレはイブキさんの勢いに完全におされて、
いつもならスラスラとこちらこそ父がお世話になってます。
とか、ちゃんと恥ずかしくない息子でいられるハズなのに、
この時はどうも。というのが精一杯だった。



「ところで、キミの娘さんは?」

「え?あ、あぁ。アイツつくなり一目散に遊具のほうにかけてっちゃいましてね、ったく誰に似たんだか。

 
 おーい!!!ー!」



名前を呼ばれて振り向いた1人の少女がいた。
その子は、父親においでおいでをされるとすぐに嬉しそうにこちらにかけてくる。


「なーに、パパ??」


「サクモさん、カカシくん。娘のです。」

「・・・・髪の色、キレイね。」

少し低い位置から見上げるは、
遠慮を知らない子ども特有のまっすぐな瞳でオレを見つめていた。


「コラ、まずはあいさつだろ。」

「あ、そっか。ごめんなさい。と、あとこんにちは。・・・はじめまして、も?」

最後の方の恐る恐る父親を見上げる姿は、なんとも愛らしく
それだけで周りの大人に愛されていることが窺える。


「カカシくん、仲よくしてやってね?」






こうしてオレたちは出会った。

ちょうど目の前で、そのころの2人と同じような年齢の
おとこのことおんなのこが微笑ましく遊んでいた。


「そっかぁー・・・あんな時があたしらにもあったんだよね。」

「そーね、どんだけ前よって話だけどねぇ。」






父親たちが自分たちをおいてさっさと話に夢中になっている一方で
オレたちは、とりあえずお互いを知るところから始めた。



「カカシ・・・・くん?」

「カカシでいい。年もそんなにかわんないでしょ。」

「うん!私、っていうの。」

「それはさっきイブキさんから聞いた。」

「あ、そっか。」


おんなの扱いなんて知るか、と思っていたカカシの態度は
自然と無愛想で、どちらかというと冷たい印象をうけるようなものになっていた。


「オマエも忍なの?」

「んーん、パパが私にはまだはやいって。もう少しおねぇさんになったらアカデミーにはいってもいいよって言ってた。」

「あっそ。」

こんなことなら1人で修行してればよかった、と
つまらないという態度を前面に出しているにもかかわらず
目の前の少女は、しょげるどころかその笑顔はむしろ輝きを増しているように思った。


相手にされてないのがわかんないのかな。


あえて口にだして言ってやろうかとも思ったが、
なんとなく一瞬考えて結局やめた。


すると、



「ねぇ、カカシ!」

「なに?」

「あそぼ!!!」


キラキラとした瞳で、

カカシと知り合ったことがよっぽど嬉しかったのか
まるで新しいオモチャを見つけたときのようにまっすぐとカカシを見た。


嬉しそうに、笑うんだな。



その笑顔に、素直な態度に

オレは純粋にという人間に興味を持った。






「っていうか会っていきなりオマエ、あれはナイよね。」


若干不自然に横に流れる髪の毛を
指で一房つかみ眺めるカカシ。

言葉よりも責めるかんじはなくて、私は隣でホッとしてる。


「だってー・・・本当にそう思ったんだもん。」


おもわずそう口にすると、
心だけが急にあの頃に戻ったような感覚になった。



「今でもすごく、綺麗だよね・・・カカシの髪」



私は、思わずカカシの髪に手を伸ばしていた。

「・・・?」

「え?・・っ、あ!ごごご、ごめん。」

なにやってんだろう、私。
懐かしくてつい。

ふと、飛び越えてしまった時間の壁に
焦りに焦った私には、咄嗟にカカシから身を離そうという考えしか浮かばなかった。

急なことに、慌てる姿をクスクスと笑いながらカカシは


「じゃあオレものこと触ってもイイ?」


途端に大人の笑みを浮かべてそんなことを言われてしまうと
もう、私としてはからかわれてるのがわかりきってるのにどうしていいのかがわからない。


とりあえず片手で顔を隠しながら、冷静になれる距離を探そうと

慌てて行動したのがいけなかったらしい。


昔っからどんくさい私は、例にもれず足がもつれて
自分の足で後ろに転んだ。



もとい


転びそうになったところを、カカシが見事にキャッチした。



「・・・相変わらずだね、そーいうトコ。」

「う、あの・・・・ごめん。」


久しぶりに近くで見たカカシの顔に
大半が隠れていながらも、しばらく心臓のドキドキはおさまりそうにない。



そんなを抱き起こしながら、
カカシは再び過去のことを思い出していた。




無茶して、助けて怒っても

はカカシに怪我がなくてよかったと笑う。



そりゃ、忍なんだしこれくらいで怪我なんかしないから。
とバカだなって思った反面

カカシは初めてを無条件で守らなくては、と思った。


自分よりも、オレなんかの心配を
笑ってできる存在をなくしたくない。



いつだって、思ってた。


コイツは
は、オレが守ってやらなきゃって。


その約束に身動きとれなくなって、
こんがらがった感情が苦しさを残して、今に至っていたとしても。


「ごめんね、カカシ怪我とかしなかった?」

「怪我しそーなのはむしろオマエの方でしょーが。」


オレと一緒の時間では、転ぼうが落ちそうになろうが
泣いてるに父親たちが駆けつけてくることは1度もなかった。

むしろの手をとるオレに、
父さんたちは優しく笑ってたと思う。

オレにもそんな風に笑えてた時期があったのかな。



どこに忘れてきたんだろう。

今のオレはあん時の父さんやイブキさんみたく笑えてる?







隣を見れば、今はそのほとんどが覆われている横顔がうつる。

わざとなのか、視線の先の光景によほど夢中なのか
カカシはこちらを向かない。

記憶を一緒に振り返る今は少し不思議に思う。



なんでこの人に嫌われちゃったんだろうって。



私とカカシの間に流れる空気はあったかい気がするのに、
間の溝はすっごく深い。



どこだろう。

理由はどこを探せばみつかるんだろう。





それってあと5日で見つかるの?










はい、2話目です。
昔のね、サクモさんとカカシ先生の親子らへんが時間軸おかしいだろ
ってかんじなのは創作ってことで笑って許してください。
サクモさん、好きです。
父の前では優しく笑うカカシ先生とか想像しただけで、ちょお萌え。