【ゲンマの場合】



「ゲーンマ。」

机に向かって珍しく書類とにらめっこしているゲンマ。
事務は俺の仕事じゃねぇっていつも言うくせに。なんで今日はそんなに真面目やっちゃってるわけ?

さっきから隣に座ってあれこれ話かけてみるが、目の前にある紙を見るばかりでちっともこっちなんて見やしない。
あぁ。とか、おー。とかばっかり。せっかく任務の合間をぬってアタシがここにいるっていうのに。
あとちょっとで次の任務の集合時間なんだぞー。

・・・・つまんないの。

そんな時、ふと頭に浮かんだのは最近特にくの一の間で流行ってるあの遊びだった。




来てからずっとなにかしら口を動かしていたが急に黙った。
息まで殺して、ひっそりとしたにその場だけが突然別世界だ。


・・・・なにがしてぇんだか、コイツは。


視線は書面に落としたまま、の様子を窺ってみると猫のような大きな瞳をこちらに向けて
うっすらとした笑みを浮かべる姿に、俺はなんだか眩暈がしそうだ。




降参だ、とでもいうように椅子を90度回して身体ごとこちらを向いたゲンマの眉間には
書類を睨むときよりさらに眉間の皺が増しているのは気のせいではないような。

そんなににらまなくてもいーじゃん。

でも、そんなのにまけてはいられない。
視線をそらした方が負けなのがこのゲームの唯一のルールなのだ。


「「・・・・・。」」


しばらく無言で、お互いに見つめ合っていた。
・・・・というより、ゲンマは完全に私のこと睨んでるけどね!

はずだったのに。
目の前が急に暗くなったかと思ったら、いきなり唇に柔らかくて湿ったものが触れた。

「・・・・は?」

「あぁ?お前キスして欲しかったんじゃねーのかよ。」


はぁぁぁああああァァあああ??!!!

状況がいまいちつかめない、いや目の前のこいつにキスされたのは理解してるんだけど。
その前後がまったく理解できない。なんでアタシが同僚のこいつとキスしなけりゃならんのだ!

「だっ、誰がそんなこと言った?!」

「お前だろ。」

「ちがうわー!!!!!!」

バシバシと叩かれるのを腕に受けながら、ゲンマはどうすればもう1回とキス出来るのかということばかり考えていた。
元々こいつが隣にいるのに事務作業なんかはかどる訳がない。



なんだ、なんかのヤツ今日はいつにも増してすげーかわいいんですけど。