お腹がいっぱいで、
アナタに逢えて心も満タンな。


昼下がりはどうしたって、お昼寝がつきものだと思う。



結果、お邪魔します。






下から見上げる昼下がり






「イルカせーんせ」


ふと、呼ばれて顔をあげた。


眩しい。


声の主はその背に太陽を背負い、俺の前に現れた。



・・・?」

「はぁい。」


逆光でその表情は見えないけれど、きっと背中の太陽と同じくらい眩しい笑顔でいるんだと思う。


「任務から帰ってきたのか?」

「うん。本当ついさっきです。だって・・・約束したでしょ、先生。」

そう返事をしながらは俺の隣に移動した。


「あ、もしかして忘れてたとか言いませんよね?」

「ばーか、忘れる訳ないだろ。」


忘れるわけがない。

むしろいつ帰ってくるんだろうって、思ってたさ。


しかし、待ちわびていた想いとは裏腹に少し大人になった元教え子を
イルカは真っ直ぐに見ることが出来なかった。


「あー?」

「なんです?」


「そのー・・・」

「??」


先生の横顔を見上げると、言いづらそうに鼻の頭をかきながら。


「おかえり。」


少し照れた様子で、そう言ってくれた。

私がずっと、待ちわびていた言葉。




まさかそれが言えるとは思っていなかった。

噂での生存率はかなり低かったから。



信じていた。


だけど、見送りであんな事を言っておいて


同じくらいおかえりを言うことも、

言えずにいた気持ちを打ち明けることも諦めていた。



言えなかった。
言える訳がなかった。


アカデミーを類をみない成績で卒業した、下忍選抜すらスルーして長期任務についたに。
それを誇りに思うと言って最後に顔を見に来てくれた彼女に、行かないで欲しいと思ってるだなんて。


卒業と同時に任務が決まったことを告げたのは俺。

そうさせて欲しいと願ったのも、俺。




「イルカ先生?」

「なんだ?」


「私ね、里を離れる前にイルカ先生の口から聞きたい言葉があるんです。」

「俺に?」


「任務頑張れよって、言ってくれません?
 イルカ先生に今までみたく頑張れって言って貰えたら私きっと頑張れる。」

「お前ならきっと里きっての優秀な忍になれる。任務頑張ってこいよ。」



「はい。」


「なんてのは教師としての言葉、本当に俺が言いたいのは」


頭に遠慮なく手のひらがのる。

本当はずっとそうしていて欲しいよ、イルカ先生。




、必ず生きて帰ってこい。任務の成功なんてどうでもいいからお前自身の心配して待ってる。」




イルカ先生はいつだってそう。

きちんと子ども扱いしてくれる。
私をきちんと私として見てくれる。

あくまで能力が高い、優秀な忍候補として接する周りの大人とは違った。



イルカ先生は私が壁なんて、つくる以前から心に入ってきてた。


「里に戻ってきたら、一番に先生に会いに来てもいい?」

私がそう聞いたらイルカ先生は、いつものあったかい笑顔で


がしたいようにすればいいよ。」
って、言った。

親が先だとか、なんで俺なんだとか余計なことは一切言わなかった。
そうするのが普通とか、当たり前を押し付けるんじゃなくて。

私がしたいようにすればいいよって。



でも私、本当はイルカ先生のそばにずっといたい。

先生が甘やかしてくれる存在でいたい。




そんな事、去り際に言う度胸なんて例え死ぬかもしれなくても持ってなかった。

生徒じゃなくなったお前に構う理由がないって言われたら。
今までのは仕事の延長としてやってきた事だから勘違いされたら困るなんて、言われたら。

それこそたいした成果もあげずに死んじゃうって。
って、1番の理由は怖かったから。





手を降って、いってきますと言った私の顔は笑えてると思っていたけど。
今になったら自信がなくなった。




夢うつつ


頭を撫でられる感覚が心地よくて。

って呼ばれる声が嬉しくて。


アカデミーの時の事とか、先生に卒業後の事について言われた時のこととか。
あと、見送られたあの日のこととか。
夢から覚める前の、曖昧な位置で私は思い出していた。

というか、私はいつの間にか眠っていたらしい。


思い出しながら、そういえば任務のときにわかって
すっごくどうしていいかわからなくなったことも一緒になってよみがえってきた。


わからないままがよかったって、任務中は思ったけど。

こうしてる今は、それもいいんじゃないかなんて思ってる。



先生。

私、先生が好き。
ずっと、ずーっと名前を呼んで?

私をうんと甘やかして欲しい。


って、口に出して言える日がいつかくるかな。

彼女いるの?好きなひととか、いるの?
って目が覚めたら聞いてもいい?


あーでも、も少しこのままで。

本当は私がイルカ先生にしようって思ってたんだけどなぁ。
先生、相変わらず忙しいみたいだし。
今日も目の下にくま出来てたの、知ってるんですよー。



・・・やっぱり相変わらずイルカ先生はみんなの先生なんだよなぁ。



たどり着いた先がそこでした。

正真正銘イルカ先生の生徒だった時は、そんなこと思わなかったけど
先生はあくまでも先生で。

里からお給料貰ってる、みんなの先生で。



イライラしてきた。

ダメだ。


久しぶりすぎて
私、前のキャラが思い出せない。






成り行き上ではあったが、それまで気持ちよさそうに俺の膝枕で眠っていた
急に目をあけて下からまっすぐに見つめてきた。



「・・・っ、びっくりした。起きてたのか?」


イルカ先生、仮にも忍がそれはマズイと思います。

でも今の私はそれどころじゃない。




「先生、私アナタを先生って呼ぶのイヤです。」



「え?」


唐突すぎるの提案に、イルカは言われた言葉を飲み下すのにしばらく時間がかかった。


「あーそっか。・・・そうだよな。」


180度違う方向に向かったらしい先生の考えを見事に打ち砕く方法は、私には1つしかない。

がばっ、と起き上がると今度は先生、肩をゆらしてびっくりしてる。


そんな固まった表情に、私は追い討ちをかけるように






下からそっと、くちびるを重ねた。




なんて言われたって、もう平気な気がする。

というより、さっき私を見た時の表情で
想像以上のひどいこ とは起こらないような気がしたから。




「でも突然だとびっくりでしょうから、今のところはイルカ先生って呼んどきます。」


「・・・え?ぁ、」


平気なフリをしてみても、やっぱりなんだかんだ言って先生のリアクションが怖い私は
あっけにとられてる先生を置き去りにして、その場をあとにした。








「あ。」


次、会うときにどんな顔すればいいのか考えてなかった。

しまった、と足をとめたところで


私の左手に、別の肌が触れた。


「先生?」




「・・・・・もう、置いてきぼりは勘弁な。」






あの時は別の方向に進んでいた、2人の足も

今は同じ方向を歩いている。





「先生、さっきのが初めてってことないですよね?」

「なっ??!!・・・・秘密だ。」



その反応に、


今ならあの時の気持ちを素直に言える気がした。





一方で、イルカはさりげなく
繋いだ左手の薬指のサイズをはかっていた。












・・・・やっと、最後のイルカ先生がかけました(汗

イルカ先生が相手だととうしても似たような感じになってしまいます。
うーん・・・・。
そしてあまり大きい声で言えませんが、
どこかヒロインがあのイルカ先生にべったべたな殿方のようなww
わかったかた、残念ながら時雨と同じ思考ですぞ(笑

結果、イルカ先生って受け身ですなってことです。