愛されてるのは分かってる。


そんな言葉も態度も信用出来ないんじゃなくて、

単に愛されて、大切にされている自分に
いつまでたっても、自信が持てないだけ。



やっぱり気の迷いだった、だなんて


言われたら生きていけないくらい、もう。






キライになれない





〜〜vvv」

会ってそうそう思いっきり抱きついてくる、私の恋人。

「カーカーシ〜?だから、公衆の面前で抱きつくのはやめてっていつも言ってるでしょ!!」

カカシの肩にやっと届くほどしかない身長で、上忍の中でもよりすぐりの上位にいる彼とは違ってただの中忍な私には
今の彼をひっぺがすほどの力は悲しいかな持ち合わせていない。


・・・・みんなが見てる(涙


いくら職場である受付から少し離れた、中忍たちの事務所的な場所だからといっても
これから職務につく者や同じく仕事を終えた同僚達がそこにはいる訳で、数人とはいえこんな場所で抱きつかれればさすがに目を引く。

毎度おなじみの光景に、またかと呆れるものもいるのだが。

が気になっているのは、そちらよりもさらにぐっと悪意や嫉妬に満ちた視線を送ってくる女性たちの存在だ。
私がカカシに気に入られたことが、心の底から気に食わないと思っているらしく
彼女たちからの攻撃は表立ったものはないがこうした身に痛い殺気めいたものなど、いつもたえない。


「気にすんなよ。」


「は?」



「さ、今日のご飯はなににする〜??」

つかんでいた私の身体を、鮮やかな身のこなしでさっと離しいつの間にか手を引いて出口へと向かって歩いて行く。


「ちょ、ちょっとカカシ!」


先ほどの言葉が聞き取れなくて、私はカカシに半ば引きずられるような形になりながらも名前を呼ぶと
彼は足を止め、くるっと振り向くと

「あーんな女たちなんて、興味ないよ。」

「で、でもやっぱり」


〜??」

カカシは、ちょっと怒ったように私の目線の高さに合わせるようにして少ししゃがんだ。


「オレ、がそーいうコトいうのヤダって知ってるよね?」

「・・・うん、ごめん。」




「オレはだけが可愛くて、好きで、付き合ってんの。この世に同じ人なんて1人もいないのに、誰かと比べたってしょーがないでしょ。」



カカシは私が、後ろ向きになるといつもこうした言葉を言ってくれる。

たくさんたくさん、カカシは言葉も態度でも愛をくれる。


それにちっとも応えられない、自分がイヤなだけだ。

自信をもってカカシに好きだよって、
愛してるって言えない自分にいつまでたっても、どうしてが消えないだけだ。


「その辺、ちゃーんとわかってる?」

「うん、・・・・たぶん。」


たぶんて、オマエねぇ。

煮え切らないの態度に、カカシはそっと息を吐いた。

一方的にほれ込んで、強引に付き合うようにもっていったのは自分だがいい加減自覚をもってほしい。
でなきゃ、無理矢理なのではないかとさすがのオレでも引け目を感じてしまう。

まぁ、だからって今さらだけどね。


「ってなワケで、ちーっともオレの愛がわかってないサンには今日はたーっぷりとお仕置きねv」


「え、・・・あーあのはたけ上忍?」

黒いカカシの笑みに、思わず身の危険を感じてそう口走っていたが
言ってからマズイと、は己の口を押さえたが言葉はしっかりとカカシの耳にまで届いていた。


「へぇーオマエ今、なんつった?」


カカシは付き合う前から、にそう呼ばれるのを嫌っていた。
立場は上でも、自分がより年が下だから尚のこと。


こんなに態度デカイし、有名な上忍だっていうからてっきり年上だって思ってたのに・・・詐欺よね。


「いや、あの!・・・ね?カカシ、ごめん。ごめんって〜〜」

その場でなんとか許してもらおうと、足を踏ん張るだがカカシは簡単に腕を引いてズルズルと引きずっていく。


「ダーメvもう、ってばさっきからオレの気に食わないことしすぎなんだもん。そーんなにお仕置きして欲しいとは思わなかったなァ〜vv」


本気で怒っているのではないことはわかっていたが、その瞳の奥がさらに輝きあやしくニヤついているのを見て
は今日の夜も中々寝かせてもらえないのだろう、と覚悟を決めた。

だいたい上忍であるカカシの体力はそれこそものすごいもので、性欲もそれにともなっているのか知らないが1度始まると中々終わりが見えない。
それに付き合わされる中忍、しかもただの受付や事務業務の私の身にもなって考えて欲しい。


こないだなんて、目隠しされてさんざんあんなこと・・・・//////


『へぇーやっぱ視界がないといつもより感じるんだ?』

『なっ、ちが・・・ん、ぁ』

『なーにが、ちがうって?のここ、こんなにとろとろになってるくせに。』

『あ、・・・や。カカシ・・・も、だめ』

『まだダーメvそんなにすぐにイッちゃったらお仕置きにならないでしょ?』

クスクスと笑うカカシに、その後もお仕置きと称してじらされまくって長時間たっぷりと(ねっとりと)愛された。



思い出して、は羞恥心でいっぱいになりカカシに腕をひかれながら下を向きもう片方の手で己の顔を覆った。


「なーに想像してんの?のエッチv」


急に耳元に聞こえたカカシの声に、は真っ赤になりながらも顔を上げる。

「ち、ちがいます!!」

「ちがうってなにが〜?そんな真っ赤な顔で期待されたら今夜も頑張らなくちゃね、オレv」

・・・あぁ、もう。

明日の仕事にちゃんといけるのかどうか、終わったそばから心配になるであった。





そんなカカシと付き合うことになったのは、数ヶ月前。

私はそれまでの別の部署での事務業務から、受付業務へと移動を命ぜられた。
なんとか仕事にも慣れてきた頃

そこに現れたのが、カカシ。


「キミ、新人サン?かーわいいねぇ。」


「ぇ・・・あ、あの・・報告書は。」

突然の冗談のような言葉に、戸惑いながらもは先輩には任務を終えた忍がきたら
報告書を受け取って不備がないか確認をするように言われていたためそれを提出するよう、目の前の上忍に言う。

「ん?」

あくまでもとぼけた様子に、慣れないは必死だ。

「ですから、報告書の提出をお願いします。」

「報告書ねぇ。あー・・・キミの名前、教えてくれたらだそーかな?」


は?


信じられないような軽い言葉に、思わず口も開いてしまうというものだ。


「あ、あの!ふざけないでください・・・困ります。」

そんなの頑なな態度をカカシは気にもとめない。


「えー別にふざけてるつもりはないんだけどなァ。」

と、ひょうひょうと言いのけて今度来たときには、教えてねvとその場を去っていった。


「あ!ちょっと、報告書は」


ガタン、とが椅子から立ち上がるとどこからともなくヒラヒラと1枚の紙が舞い落ちてその手に収まった。
もちろん、その内容に不備など1つも見当たらない。



「・・・・なんか、変わった人。」



その人が、まさかあの有名なはたけカカシだというのを知ったのは


さん、ちょっといいかしら?」


事務方でも、目を付けられるとおっかないと有名な先輩たちに呼び出しをくらったから。


「あなた、ちょっとカカシさんに気に入られてるからって調子にのってるんじゃないの?」


ひとけのないところに呼び出して数人で囲むだなんて、なんだかベタな展開でもの脳内はパニックだ。
それも、これも全てあの上忍のせい。


〜〜今日も相変わらずかわいいねv」

他にも2人、受付の人がいるのにわざわざ一番離れた私のところにこの上忍は報告書を出しにくる。


「任務、お疲れ様でした。それでは、確認しますので少々お待ち下さい。」

なにやら言っているが、気にもとめずに私は報告書に不備がないかを確かめる。


「ね、今度一緒にご飯たべにいかない?」

「行きません。」

どこで知ったのか、いつの間にか呼び捨てで名前を呼んでいるし。


「すみません、他の方の迷惑になりますので報告書を提出し終えたならお帰りいただけますか?」

「えー。」


えー・・・ってこっちが言いたいんですけども・・・。


が冗談だと思い込み、相手にもせずにいると
まだ会って数回だというのに、目の前の男は驚くことを言ってのけた。


「じゃあー、オレと付き合ってくれる?」


はぁ〜〜〜????


これには、周りで聞いていたものも驚いた。

「い、いや。あの」

「ダメ?」

ダメって・・・私あなたが誰だかということすら知らないんですよ?

唯一出ている右目で、まっすぐに見つめられてどうしようもなくなったは受付の奥へとひっこんだ。
そこですかさずスタンバイしていたこわーい先輩方に捕まった、という訳だ。


もう、なんで、こんなことに。


は今、仕事もそっちのけで逃げていた。

・・・なにからって、あのおっかない先輩たちから。


そういえば、こないだからなんだかずっとついてない。

慣れない受付業務にまわされてミスの連発で、毎日自己嫌悪の嵐だし
忙しいのに、変わった上忍の冗談に付き合わされるし
その上忍が実はたいそうおモテになるはたけ上忍だった所為で、先輩方の風当たりも強くて

こうして逃げ回るハメになるし。


は実戦向きではない、そのため逃げていてもこうしてすぐに息が上がってしまう。
このままではいけない、と木の陰でやり過ごそうとしばし身を隠すことにした。


せっかく受付の仕事にも慣れてきたっていうのに。
職場、変えてもらおうかな・・・。


そう思っていると、気配もなく後ろからに近づく人物が1人。


「ね、たすけてほしい?」

「ハァ、ハァ・・・だれの、せいで・・・っはぁ、こんなことになったと思ってるんですか。」

「んーオレ?」


・・・あーもう。一体何なの?


「はたけ上忍、私なんかより素敵な女性はいっぱいいらっしゃるでしょう。気まぐれで私のような中忍をからかわないでください。」


のその言葉を聴いて、カカシはそれまでのヘラヘラした表情を止めた。



「気まぐれなんかじゃなーいよ。」

私の腕をとって、口調はそのままで真剣になった顔をぐっと近づけてそう言う。


「初めて見たとき・・・どうしてだろうね。すぐにキミが欲しいって、思ったよ。」


その澄んだ瞳に

柔らかな笑顔に


一瞬で、オレの心はとらわれてしまったから。



すぐ近くで先輩のくの一たちの声がする。


「・・・離して、ください。」

見つかると困るは、精一杯の声で抵抗を試みる。


「ダーメ。ね、助けてっていいなよ・・・そんでオレのことスキになって?」

耳元で囁かれる声に





「一生、愛してあげるからさ。」





どうして、嫌だと言えただろう。


それがカカシとの始まり。

その後何をどう言ったのか、表立って先輩たちに追っかけまわされることも
嫌がらせされることもなくなった。

・・・ただ、今日みたいなことがあると遠くの方からチクチクとした殺気が送られてくるんですけどね。


あーもう・・・しかも明日はバレンタインじゃないか。


1年に1度。
女性が好きな男性にチョコと一緒に己の想いを告げる日。


それはそれは、たいそうおモテになるカカシには関係大アリなイベントだった。
・・・もっとも関係あるのはカカシを好きな女、の方なんだけど。


帰り道にも、どこの店もイベントにあやかろうと大きくバレンタインの広告がされており憂鬱なにとっては目に痛い。


「あーそういや明日って、バレンタインだっけ。」

「・・・みたいねー。」

恥ずかしくて、人目もあるから嫌だと言っても即刻却下され
今、の左手はカカシの右の手のひらの中にある・・・しかも俗にいう恋人つなぎ。


「もっちろん、はオレにチョコくれるんでしょ?」


・・・どうせ他の女の子たちからたくさん貰うんだし、私のがなくったって。


「んーでもカカシ甘いものキライでしょ?」

「・・・まぁ、そーだけど。」


きっと、まだ私の事を彼女だと認めてもいない女の子たちから愛の告白を嫌と言うほど受けるのだ。

「じゃあ、いいじゃない別に。それに私なんかより、」

そこまで言ってハッとした。

カカシは私がそういうことを言うのを嫌うから。


「そっか。」

なんでか、この時のカカシは寂しそうだった。


ねぇ、カカシ。

なんで地味でなんのとりえもないような私なんか好きになったの?


たまには違うタイプでもって思ったから?


・・・いつか。


いつか、やっぱやーめたって言うんじゃないの?




私の不安をよそに帰ってからは、先ほどのことなんて無かったみたいにいつものカカシだった。

・・・・エロイとこまで。




「じゃあ今日も迎えにくるから、オレが来るまでまっててね。」

「うん。任務、気をつけてね。」

任務内容が書かれた紙を、はカカシに渡す。

「いってきまーす。」

「いってらっしゃい。」

さすがに、いってらっしゃいのキスとまではいかなくともカカシはの頭をポンポンとなでてその場を去っていった。


「相変わらず、愛されてますね。」

「あ、はっ・・・・はい。いや・・そのーなんていうか///」

隣にいるのは、アカデミーの先生をしているそうだがたまに受付業務をしているイルカさん。


「うらやましいなー。俺もさんみたいな彼女欲しいですよ。」

「は?や、やだなーイルカさんったら。下心見え見えですよ。」

そう言って机の下にある鞄から取り出したのは、小さめのチョコ。


「え?!俺にくれるんですか!!」

「しー!!静かにしてください。」


驚いて少し大きな声になっているイルカを、必死に諌める。

・・・どこからカカシの耳にはいるかわかったものではない。


カカシは相当のヤキモチ焼きで、こうしてイルカさんと話しているだけでも嫌がる。

でも女の同僚は先輩たちの目を恐れて、男の人もカカシの嫉妬の矛先が向くのを恐れて
大抵仲よくはしてくれなくてこうして話をしてくれる人は、それはそれは貴重な存在だった。


「おいしくないかもしれないですけど。」

「え、手作りなんですか?」

「一応は・・・でも大したものじゃないですから。」

「俺・・・カカシさんに殺されそうだな。」

アハハハ、と軽く笑うイルカさんに私は思わず少しうつむく。


「大丈夫です。カカシはそんなもの、欲しがったりしませんよ。」

「え?」

の暗い声に、イルカは驚いて思わず視線をの顔の方にむける。
見られているのがわかったのか、は慌てて笑顔をつくり言い訳の言葉で取り繕う。

「や、だってカカシはキレイな人たちからいっぱい貰えるじゃないですか!」

さん。」




「男は本当に好きな女性から貰えるのが、一番幸せなんですよ。」




爽やかな笑顔にそう言われてしまっては、いやもでもも言いにくい。

イルカに言われては、一応つくってはみたものの捨ててしまおうかと思っていた
鞄に入っているカカシへのチョコを見つめて、すっかりその気になっていた。


迎えにくると言われたものの、一向にその気配がない。
他の受付の人たちも私たちにまかせて後は夜勤の人が来る前に、帰ってしまった。

私1人でも大丈夫だと、イルカさんには言ったが頑なにうんとは言わなかった。


「遅いですねーカカシさん。」

「そうですね、もうすっかり暗くなっちゃったのに。」


っていうか、夜勤の人も来ない。


「そろそろ交代のはずなんですけどねー私ちょっと見てきますね。」

「はい、お願いします。」

そう言ってが、奥に入っていくとなにやら人の声がする。



「・・・去年は受け取ってくれたじゃないですかぁ。」

「やーでもね、知ってるでしょ。オレ今彼女いるのよ。」


聞こえてきたのは、ずいぶんと聞きなれた・・・声。


「えーでもぉ、私ずっとカカシ上忍のこと好きだったんですよー。」

「えーズルイ!そんなのあたしだってずっとはたけ上忍のこと好きだったもん。」

カカシの周りで数人の女がきゃいきゃいと、かわいくラッピングされたものをもって騒いでいる。


あーそれでか、遅くなってたの。
・・・って、夜勤の人もいるじゃない。


「はたけ上忍、あんな彼女と別れて私と付き合ってくださいv」

「やだぁ、私のほうがいいですって。私上忍だし、料理も洗濯もばっちりですよー。」

「あんな女のどこがいいんですかぁ?私、エッチにも自信あるんですぅ。」


聞けば聞くほど、自分がみじめになっていく。

見れば私なんかよりよっぽどかわいくて、キレイな人たちがいっぱいいる。



なんで、

なんでカカシも否定しないのよ。


先ほどからずっと黙っているカカシにも、悲しくなった。
やっぱり気まぐれだったんじゃない。

私なんかより、ずっとずっと魅力的な人たちに囲まれて我に返ったんでしょう?!


は苦しくなって、その場から逃げるようにしてイルカのもとへと戻っていった。


さん?」

バタバタと、鞄をひっつかみ

「すみません、交代の人もうすぐ来ると思いますから。あとよろしくお願いします。」

「え?ちょ、ちょっとさん!」

呼び止める声がしたが、挨拶をして私はふり切って家へと急いだ。





そのままの勢いで、は鞄から昨日あぁは言ったがやっぱり念入りに包装してしまった
イルカに渡したものより少し大きめのチョコを掴み、ゴミ箱に向かって腕を振りあげる。


その時



「ちょーっと待った。」




の腕はゴミ箱へと振り下ろされることなく、後ろからカカシにつかまれてしまっていた。

「・・・離して。」

「ダーメ。だってそれ、オレのでしょ?」

「いい、捨てる。」

フゥ、とひとつ息を吐きカカシは向き合うように私の身体を反転させた。


「なんで捨てるなんて言うの。」

「別に私のなんていらないでしょ。」

「いるよ。」



「私があげたくないの。」



作っておいて、それはない。と自分でも苦しい言い訳だと思ったが今はそんなことどうでもいい。


「ねぇ、。」

呼ばれても、カカシの顔すら見れない。





「オレのこと、スキ?」




そんなの決まってるじゃない。


カカシなんて、



「カカシなんてキライよ。」



「キライなの?どうして?」

カカシは、の発言に動揺する様子もなく理由を問いかける。
それまで下を向いていたは、そっと顔をあげ目の前にいるカカシの顔を見た。


「だって・・・。」

「だって?」
まるで幼子をあやすように、優しく己の手をの頬にそえた。

「カカシは皆に人気で・・・尊敬されて、期待されてて。」

カカシはゆっくり話すのペースを崩さないように、首をかしげて先を促す。

「でも私は、中忍で・・・年上だし、別に可愛いわけでもキレイなわけでもない。」



「カカシは女の子たちにも人気だから、・・・私なんて何人目の彼女かわからないし。」

「わからないし?」

おや?とカカシは思った。

にしては、珍しい愚痴だ。
今まで自分の事を蔑むことはあっても、カカシに対して不満を言ったことは一度もない。

そんなにがっかりする訳でもなくただカカシは、湧き上がる嬉しさとも喜びとも似つかぬ感情をかみ締めていた。

ほーんと、オレってに甘いよね。
ま、苦労して手に入れたんだから当たり前なんだけどねー。

「わがままだし。」

「わがままだし?」

「すぐ嫉妬するし。」

「嫉妬するし?」


「イルカさんにだって、いつもあんな態度・・・。」



カカシはニヤケそうになる口元を必死に堪えた。

今まで執着して、こんなにも必死になって思っているのは自分ばかりだと思っていた。

オレがねだると、いつも嫌がるそぶりは見せていても必ず許してくれるし受け入れてくれる。
束縛も、嫉妬もわがままもぜーんぶオレ。

そんなに少し心配になっていたところだったのだ。


自分がこんなにも嫉妬深いと知ったのも、と出会ったから。


もっと、心の奥が見たい。
心乱しているが見たい。


こんなにも他人の心を手に入れたいと思ったのも、相手がだから。


オレなしでは生きられないほどになればいい。

知ってる?

オレはもうなしじゃ呼吸もうまくできないくらい、どうしようもないとこまできてるんだよ?


をこうして落ち込ませていることに原因がある事に腹は立つが、結果的には自分への不満や今までの想いを引き出せたのなら
あのいつまでたってもうっとおしく自分の周りを取り巻くくの一たちに、多少は感謝してもいいかもしれないと思った。


「人目を気にせず甘えるし。」

「あとは?」


「・・・・危ない任務ばっかりで、いっつも私が待たされるし。」

最後の方は嗚咽にまぎれてあまりはっきりとは聞き取れなかった。


「ふっ、・・・うぅ。・・・私だけのカカシにしたいのに・・・っく、だからキライ。カカシなんてキライだよ。」


キライだと繰り返すは、

都合がいいとか、勝手だとか、
もう何を言われてもかまわない。



全身でオレが好きだと言ってくれているとしか思えなかった。



自分の激しすぎる想いで、をつぶしてしまわないように。

出来るだけ力を加減してを抱きしめた。


「ごめーんね。オレはが大スキなの。もう、ほかのコトぜーんぶどうでもよくなっちゃうくらい。」

「カ、・・・カカシ。」
 



「だからダメ。がオレのことキライでも別れてなんてあげなーいよv」





そういうカカシにもう自分が情けないやら嬉しいやらで、よくわからなくなった私は腕のなかでぐしゃぐしゃになるまで泣いた。
抱きしめる腕はあたたかくて安心した。



「ね。」

話かけるに、ゆっくりと腕を緩めてお互いの顔が見えるようにした。


「ん?」

「あの、・・・・これ。」

そう言って目の前に差し出したのは、捨てようとして止められたカカシへのチョコレート。


「ありがとv」

カカシは抱きしめる腕を離してからのチョコレートを受け取った。

「あっ、あの・・・きっと味は劣ると思うんだけど。」

「もしかして手作り?」

まさか、チョコをもらえるとは思っていなかったカカシはさらに手作りだという事実に目を輝かせた。

「ありがと!もうオレ、すっごく嬉しい〜〜。」

そう言って再びを抱き寄せた。


そんなに喜ぶことかな。


「あ、今そんなに喜ぶことかよって思ったでしょ。」

「え、あー・・・・だって・・・あ!」

そう言っているうちにぱく、っと一つ指でつまみあげた丸い形をしたそれは、あっという間にカカシの口へと消えていった。


「んまーいvあんまり甘くないのにしてくれたんだねーさすが。オレのことわかってるー。」


「・・・・・・。」




「どうした?あ、ちなみに当たり前だけどオレ、のしか貰ってないから。」





現場を目撃してからずっと心の中にあったもやもやは、このとき初めてなくなった。

「でも、・・・カカシそんなことしたら角がたつよ?」

こんなのずるい。
本当は、そうしていて欲しかった。


他の女を気にするフリをして私は、

カカシの口から、私の以外は欲しくもないって言葉が出るのを待ってる。


そんな私の気持ちもカカシはお見通しのようだった。



ー?素直にいってごらん?」


「え?・・・あ、その。」





「・・・・これからもずっと受け取らないで・・・好きなの、カカシが好き。」





「だから、私だけ好きでいて。」





「ごーかっくv」

カカシはそう言ってキスをした。


ころん


あ、甘い。

カカシの口を通して運ばれてきたのは、私が作ったあのチョコだ。

どんどん激しさと濃さを増すキスに、甘いのはチョコなのかキスのせいなのか
私の頭はぼんやりとしていてどちらなのかよくわからなかった。


「ん、・・・・ぁ。」


思わずもれたの声に、思わず夢中になっていたカカシはようやく我に返った。



「ちゃんと言えたごほーびv」

頭を優しく撫でてくれるカカシはとても満足そうだ。
そんな状態の彼にどれが?ダレに?とも思ったが、おそらく全部ひっくるめてごほうびなのだろう。



「っていうかさ。」

「うん。」





「オレ、とっくに以外女だと思ってないよ。」





「それにチョコなんて甘いモン以外から貰っても迷惑だしねー。」といつものヘラヘラした表情を浮かべて言う。

そんなカカシにはめられたような気もしないでもなかったが、
彼がこんなに嬉しそうにするなら、と思ったであった。


これからは、もっとちゃんとカカシにスキって言おう。






後からイルカさんに聞いた話だけど、
私が帰ってすぐに背すじが凍るような殺気を感じて、何事かと慌てて奥に行ったイルカさんが向かった先には


ものすっごく冷たい目をしてくの一たちを見るカカシがいたんだとか。
私が先に帰っていったことを知ると、その機嫌もさらに悪くなりひやひやしたそうだ。


・・・ねぇ、私があの場で聞いてたの知っててわざと最初黙っていたんでしょう?



だけど、そんなカカシがキライになれない。





っていうか、大スキ・・・なんです。









めずらしく世の中のイベントごとに乗っかってみました。
いかがでしたでしょうか、年上のヒロインに本能むきだしのカカシ先生v

ちょっとヒロインが精神的に幼すぎかなーとも思ったんですが、
カカシ先生もなんだか似たり寄ったりなカンジに仕上がったので「ま、いっか。」と納得してみましたw

うーん、高校生っぽい?いや、でもまぁこれでいいんです。

スキなくせに、素直になれない。思わずキライだと言ってしまうヒロインに
根気よく問いかけるカカシ先生を想像したら、ものすんごく萌えでした。

そして、それでもスキだと言ってくれる独占欲丸出しのカカシ先生vvv
いやー脳内で妄想した限りでは激しくたぎりましたよー。

・・・それがうまく文章になっているかどうかは別として、ですが(汗


それでは、ハッピーバレンタインvv
皆さまの想いが、届きますように。



あ、最後にカカシ先生から。

の愛は、チョコと一緒にちゃーんとオレに届いたよ。ありがとう、愛してるv」