普段のオレサマらしくねーケドよ。


これは、卒業するまではオレだけの秘密だ。








個人の秘め事








「コラ!!ちょっと待ちなさい!清春くーん!!」


「だァれが待てって言われて待つかッつーの。」


こんなのが毎度おなじみの風景になってしまっていることが悲しいのですが、
放課後のこの清春くんとの補習をめぐる追いかけっこが私、の日常です。


「補習!今日こそ受けてもらうんだか、ら・・・ってキャァア!!」


そして結局は清春くんのいたずらにひっかかってしまうのも、また日常だったりします。


「残念だッたなァ〜〜ブチャイクちゃーん。」

「ちょっと、清春くん!これ外しなさい。」

「バァーカ、外したらオマエ追っかけてくンだろーがヨ。」

「うっ・・・あ、当たり前でしょ!!ほ・しゅ・う!!受けなさい。」

「ンなこと言われて素直に従うヤツがどーこにいンだよ。ってなワケで、じゃあにゃァ〜。」


「あっ?!ちょ、ちょっと清春くん!!!」



「・・・・はぁ。」


現在私の足首には手錠のようなものがはめられていて、その先にはどこに繋がっているのやらジャラジャラとくさりが。
清春くんとの毎日のこれが、最近では生徒だけでなく先生達の間でも聖帝の名物と言われてるとか。


「・・・・そんなの嬉しくないんだけどなー。」


次々としかけられるいたずらに、怒りと少しの悲しさがこみあげてくるも結局許してしまうのは
時々気まぐれに補習を受けてくれる清春くんの姿を信じてるから。





問題のプリントに悪態をつきながらも、真剣に机に向かう。

落ちかける夕暮れに照らされる、少年と大人の間を足踏みしてる横顔が


嬉しくて、

でもどうしてかな、どこか切なくて。



そんなことをぼんやりと考えながら、その時の私は横に座っていた。





「・・・・靴脱いだらいけるかしら。」



こんなことでくじける私じゃないのよ。

思い出したように、急に広い廊下の真ん中で1人手錠と格闘し始めた





「・・・・センセー・・・パンツ見えてんぞ///」




「えっ?!!!」

言葉の内容などそっちのけで、
人がすぐ近くにいたということに驚いたが顔をあげるとそこには




「はっ、一くんいつのまに!!」

「廊下の真ん中にいりゃー誰だって気になるっつーの。って!!だから先生、足閉じろって!!」

「へ?・・・・き、きゃあああ///」


真っ赤になって顔を背ける一に、そこでようやく気がついた
負けじと真っ赤になって慌ててスカートを押えた。


「・・・・見た?」

「ぶっ?!」


俺がさっきなんて言ったか・・・・なんて深く考えてねぇよな。先生だし。


にしても


一は真っ赤な顔で下から自分を見上げるを一度見て、再び顔をそらした。



そんな目うるうるさせて俺を見ないで欲しいんだけど。


などと、言える訳もなく。



「はぁー・・・見てねぇから、安心しろよ。」

「よかったぁ〜〜ねぇ、一くん。清春くん見なかった?」

「清春?見てねぇけど・・・って、もしかしてそれ?」


一の視線の先には、足首にはまる手錠とその先に伸びる鎖。


「そうなの、いつものいたずら。私、動けないから清春くんに鍵もらってきてくれると助かるんだけど、・・・一くん?」


一くんは少し真面目な顔つきになったと思ったら、
ポケットからなにかを取り出しながら私の横にしゃがんだ。



「・・・じっとしてろよ。」



それだけ呟いて、横座りした私の足首を持ちながら手錠の鍵穴にピン止めをさしてカチャカチャとしていた。



「う、うん。」



少し長い髪を耳にかけるしぐさとか、

男の子なのに伏せられた瞼に際立つ長いまつげとか



いつも明るく笑ってる一くんの真剣な表情とか


すぐに触れられる距離にいることに
なんだか異様に恥ずかしさを感じて、ドキドキした。



触れられる足首がどんどん熱をもっていく気がする。



ドキドキって、なに考えてんの?!
だ、だめよ。一くんは生徒で私は担任の先生だもの。


そりゃ一くんは優しいしかっこいいけど、それは面倒見がいいからであって決して・・・・



「あのさー先生?」

「ん、なに?」


「考えてることだだもれなんだけど///ってか、集中出来ねぇから少し黙ってて。」


「ごっ、・・・ごめんなさい///」



きゃぁああ、私ったらまたやっちゃったわ///
どこから口に出てたのかしら。

ああもう、本当恥ずかしい。



あたふたとしながら、結局考えていることが口に出ている

一は少し困ったように笑いながら、再び手元の鍵穴に集中した。





ようやくこの状況になれた頃。ふと、足元が軽くなった。


「ん、外れたぜ先生。」

「ありがとう、でもすごいわね。ピン止めで鍵開けちゃうなんて。」

「あーまぁな、こんなんおもちゃみたいなもんだし。つーかさ先生、足。赤くなってっけど保健室いったほうがいいんじゃねーの?」



「え?あ、大丈夫よこれくらい」

なんともないことを見せようと立ち上がった
しかし、手錠がはめられていたそこは

とっさの動作には堪えられない程度にはなっていたらしい。


「わっ・・・。」

「ぅお?!」


倒れる、とくるはずの衝撃を待ち構えてみたが
の身に訪れたのは、2本の腕の感触だけ。


「・・・あっぶね。もーセンセ〜〜。」

「ごめんね、一くん。あの、ありがとう。」

改めて手を借りて立たせてもらいながら、スーツの埃まで落としてあれこれ世話を焼いてくれる一くんに
私は顔があげられない。っていうか、今顔真っ赤な気がするし。




「あんま俺を刺激するよーなことすんなよ。・・・・・なにすっかわかんねぇぜ?・・・」




「え?」

耳元でなにか一くんが呟いたような気がしたけれど、
聞き返してもいつもの明るい笑顔を見せるだけで教えてはくれない。



「それよりさ、先生。清春のやつバカサイユにはいなかったから案外教室にいるかもしれないぜ?」

「そうね、もう1度教室に行ってみるわ。」


じゃあな、と言って背を向けて廊下を去って行く一をは呼び止めた。



「一くん!」


「んー?」

「ありがとう、気をつけて帰るのよ?」


あと寄り道とかしちゃダメよ、とか言ってる先生はさっきとは大違いで俺を思いっきり生徒扱いしてる。


あーあ、・・・まそれが先生らしいっちゃらしいけど。


でもいつか、””とか呼んでみてぇな。



「さよーなら、先生。」

「え?あ、ハイ。さようなら。」



可愛らしい笑顔に見送られて、先生のいいつけ通りその日はまっすぐ家に帰った。






一くんと別れた後、素直に教室に戻り(少し迷ったけど)その扉を開けてみると


そこには、探していた人物がいた。



「あ!こんなところに・・・って」




清春くん・・・・・寝ちゃってる?




机に腕を組みその上に頭を乗せている清春の横に、いつものように座る


「聖帝の小悪魔だなんて思えないかわいい寝顔ね。」


フフフ、と笑いながら腕から顔をのぞかせるその寝顔を見つめていると

起こす気にも、その場を去る気にもなれずにぼんやりと僅かなときをそこで過ごした。





やっぱり、夕陽にてらされるその姿が




どこか切なくて、

胸の奥のほうがチクチクする。





「運動神経バツグンでバスケしてなくたってすっごくかっこいいのに・・・これで素直に補習をうけてくれれば文句なしなんだけどな。」

聞いていないとわかっているからこそ、素直に想うままを言葉にしてみた。




「でも少しづつだけど頑張ってるものね、えらいえらい。」


思わずが清春の頭をなでると、



心なしかぴくりと揺れた肩。



「卒業するまでの僅かな時間だけど・・・私に清春くんの夢のお手伝いをさせてね。」


春から見てきた清春くんの色んな表情が、頭に浮かぶ。



意地悪に笑ったり、
バスケに夢中になっていたり

B6の皆と本当に楽しそうに笑ってる姿も。


怒ったり、

清春くんでも悔しくて泣いたりするのかな。


自分の気持ちに驚くほど素直なときも、
わかりにくいけど、そうじゃないときも


私がそばにいられるのは、清春くんの教師である今だけ。



これから先



「・・・・大人になった清春くんの隣にいれる女の子が少しだけうらやましい、な。・・・・・」




腕をひきながら、最後の方はほとんど呟くようにしての口から出ていた。



いつまでも清春の寝顔を見ていたいような気もするが、いい加減起こした方がいいのだろうか、
とあれこれ悩んでいるうちに校内放送で呼び出しがかかった。



先生、先生お電話です。至急職員室までお戻り下さい。』



慌てて立ち上がり、最後にドアのところでもう1度清春を見るも

結局、はそのまま教室から立ち去った。





パタパタ、と軽めの足音が立ち去るのをBGMに清春はむくりと起き上がり
頭をガシガシとかきながら、教室を出ると



とは逆の方向へと歩いていく。



そして、その手にはしっかりと愛用のICレコーダーが。




『運動神経バツグンでバスケしてなくたってすっごくかっこいいのに・・・』



先ほどのやりとりを再生しながら、清春はニヤニヤと口の端を上げ意地の悪い笑みを浮かべていた。



「そーンなに、ブチャがオレッサマのことスキだったなんて知らなかったゼ。キシシシ。
 まっさか聞かれてるとは思ってねーだろうしなァ。コレでどーンな風に女教師チャンをイジメテやっかナァ〜。」


全て再生されたところで、停止ボタンを押して清春自らもその場で立ち止まる。



「・・・やっぱヤーメタ。」


これはオレサマだけの秘密にしといてやるか。

ま、そのうち他のヤツに自慢してやってもいンだけど。




も認めるオレサマのオモチャなんだゼってな。




今だけはオレとアイツだけが知っている秘密。



『・・・・大人になった清春くんの隣にいれる女の子が少しだけうらやましい、な。・・・・』




耳が赤くなる清春。


「だァ!!なンでこのオレサマがアイツのことで照れなくちゃなんネェーんだよ。」



つーか勝手に触ってくンじゃねぇよ、このブチャが。










「清春くん、おはよ・・・・え?」


その日から、清春くんは廊下で顔を合わせるたびに反対の方向へと逃げていった。
放課後もHRが終わると声をかける間もなく、帰っていく。

バカサイユにも寄っていないらしい。



「・・・・私、なんかしたっけ?」


あれだけ困っていたいたずらもピタリとやみ、にとっても聖帝にとっても平和な日が続く。


しかし、結局補習は受けてもらえていない。
今日こそは!と意気込んで近づいていっても


「清春くん!ねぇ、少し話しが」

「べつにオレは話すことなんかねぇよ。」



この調子でトコトン避けられてしまう。






「それは困りましたねぇ。清春くんが大人しいのはよいことなのですが。」

困りはてたは、職員室にて衣笠に相談していた。


「はい・・・最近は追いかけさせてすらくれないんです。私、なにか清春くんの気に障ることでもしたんでしょうか。」

「うーん、清春くんの場合はちょっと違うと思いますよ。」

「そうだといいんですけど。」


しょんぼりとしているを見て、衣笠はふわりと笑うと頭に手を置いた。


「大丈夫ですよ、先生。僕も協力しますから、本人をとっ捕まえて聞いてみましょう。」

「はい!」


衣笠先生の協力の元、次の日から清春くん捕獲作戦が始まった。


かと思えば、さすが衣笠先生。

にっこり笑って「僕にまかせてください。」と言って消えていったかと思えば
すぐに縄でぐるぐる巻きにされた清春くんを連れて、再び教室に現れた。


「オイ、おばけ!!離しやがれ!」

「ダメです。」

「はーなーせー!!!」

「さぁ、清春くん。今日という今日はどうしてそんなに先生を避けるのか教えてもらいますよ?」


「・・・ッケ。」



教室の床にふてくされて胡坐をかく清春くん。
私はその場にしゃがんで、横を向く清春くんに視線を合わせた。


「ねぇ、清春くん。・・・あの、私・・・なにか清春くんの気に障るようなことしたかしら?
 
 もしそうなら、はっきり言って欲しいの。私、鈍くて気づけなかったのかもしれないし。」



それでも清春くんは黙ったまま。

目も見てくれない。




は気がつかなかったが、この時の清春の耳がわずかに赤くなっていた。
衣笠は少し離れた位置からそれを見て、納得したように頷くと黙ってその場を去って行った。




「縄、ほどけよ。」




は悲しそうに笑って、結び目に手をかけた。

するすると清春の身柄を拘束していた縄をはずすと、伸びをしながら向かった先は教室のドアではなく。




「うるッセーな、うけりゃいンダロ。さっさと始めろよ、補習!!」


どかっと椅子に座り、自ら机に向かう清春。

じっとの顔を見つめる。



「な、なに?」


「べーつにィ。」


「気になるじゃない!言いたいことがあるなら言いなさい、清春くん。」

「これからは真面目に受けてやってもいーゼ。」

「え・・・・また私のこと騙してるの?」

「ンーなめんどくせェこともう2度とすっかヨ。オレッサマのためだって、気づいたンだよ。わりィか。」


悪くない、と笑って答えるといつものように静かに椅子を引き、隣の席に座った。



「えへへvvまた頑張りましょうね、清春くん。」



清春は照れ隠しに、の鼻をつまむと


「ブヒブヒうっせーよ、子豚。」


手を離すと清春の言い草には怒りながらも、
以前のようなやりとりにどこか嬉しそうで。




ンな顔すんじゃネーよ、こんぐらいで。
ま、さっさとブチャイク女教師とチョーウルトライケメン生徒の関係を終わらせて、

恋人同士になんネェとな。




「・・・ちょっと、清春くん。聞いてる?」

「あー聞いてる聞いてる。」




ちゃーんと聞いてたゼ?

だから今だけなんて言わネェで、これから先死ぬまで隣に置いてやるよ。


ヤダッつっても、こっちには証拠があっからな?










『普段いっつも優位に立ってるキヨが、珍しく先生が優位に立って立場逆転・・・』
という、リクをいただきましたがいかがでしたでしょうか。

またしてもワタクシみたいな者を、構ってくださった楓さんへ捧げます。

先生に頑張ってもらったんですが・・・あれ、キヨが弱かったの一瞬(汗
しかもおいしい部分ははじめが持ってくっていう残念な感じになっていてすみません〜〜。

ゲームのICレコーダーネタを見ての妄想でした。
寝たふりしてるキヨに気づかない思い切った先生に、
キヨが照れてると萌えるんですけど、という勝手な思いだけでつっぱしりました。


あああ、これ書いてるときはまだですがきっとますます楓さんが好きになっていると思いますv
ていうか、現在進行形で大好きです。すいません。

これからもこんなワタクシですが仲よくしてください〜〜。