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少しだけ日に焼けた だけど白いその首筋は、オレのもの。 あの、そこオレだけが触れてイイところなんですけど。 魅惑の首筋 1 「ん、・・・あ」 の首筋を湿り気を帯びた滑らかな感触が伝う。 「だっ、ダメ・・・ぅ・・くすぐったいってば。」 「ふふふ、ぁ・・・ちょっと、んッ、首はやめて。」 「ダメだってば、ふく。」 ポスッ、とすぐ隣のソファーに座ってオレはそいつの首根っこをつまみ上げる。 「・・・オマエ、調子にのりスギ。」 まだ少し小さな身体を宙にぶら下げると、知ってか知らずか目の前の猫はにゃあと鳴いた。 「あの、すみません。カカシさんの読書の邪魔でしたよね。」 すまなさそうにしょぼん、と肩を落とすに「うん、コイツがね。」などとは言えない。 先ほどから、イヤ預かった3日前からずっと に“ふく”と呼ばれたこの子猫はオレたちの邪魔をする。 というか、うっとーしいくらいにオレの邪魔をする。 しかし、の可愛いがりようをみていると邪険になど出来ずにいる。 それにどっちかってゆーとオレが邪魔者ポジションなのがね。 すっげぇ、ムカつくんですけど。 事の始まりはさらに5日前。 がよく行く商店街の1軒に、店先で猫を飼っているところがあるのだが そこの旦那さんが脚立から落ちたかなんかの怪我で入院する事になり、 少しの間だけ預かってくれる人を探している。 とに相談したところ、元々ふくに懐かれていたこともあって 人が良いのか悪いのか、は二つ返事でふくを腕の中に抱えて帰ってきた。 が普段お得意様なことをわかっているのか、 この猫の愛想の振り撒き方も大したもので猫が自分勝手とはよく言ったものだ。 が笑って名前を呼べば、機嫌よさそうに喉を鳴らして自分からすりよって行く。 すれ違いに、に見えない角度で得意気に見ていくのをオレはこの目で確かに見た。 なんなの、あの猫。 そのポジションはオレのだって。 っていうかもで、懐かれているのが嬉しいのか ふくを見るその目が垂れ下がりそうなほど、幸せそうに笑っている。 ふくはどうやらムサシとも折り合いがつかないようで、どことなくムサシが居心地を悪そうにしている。 そんなのに気づいたのも、やっぱオレだけ。 こうして犬属性のオレたちと、 まるっきり猫なふくとのつかぬ間の戦いが始まった、というワケ。 他人が聞いたらついに猫にまで嫉妬して、と呆れてひっくり返りそうな事でもオレにしたら堪らない。 ・・・・・いつまで続くのよ、この状況。 そして冒頭に戻る。 がソファーに座り、膝に飛び乗ったふくがじゃれあってるうちに どんどん調子にのってなんとの首を舐めだした。 始めはクスクスと笑っていたも、 その反応が本人にそのつもりは全くないだろうが他人が聞くと甘さを含んでいた。 ・・・・オレだって最近にそんな声出させてないのに。 ふくが来てからというもの、行為に至ろうと寝室から閉め出すと ドアを弱々しくひっかきながら、悲しそうに鳴き続けるヤツに可哀想とが根をあげた。 強引に事に及ぼうとも考えて、それとなくもってったりもしたが ふくが側にいるんじゃ・・・・とやんわり断られる結果に終わった。 その時もやはりこの猫は、に見えない角度で優越感に浸りきった表情をオレに向ける。 上品そうな毛皮を丸裸にしてやろうかな、という考えが一瞬頭をよぎったが ここは人間として、の恋人としてがまんした。 そんなこんなでふくには必要以上に関わらない事に決めたカカシは、 この日もダイニングの椅子に座り大して入ってもこないイチャパラを眺めていた。 アイツに関わるとがどんどん勘違いしてオレの好感度が下がる。 昨日、そんな猫はほっとけばいい的な発言をしたらあっさりとは猫をとった。 オマケに 「すみません・・・カカシさんは忍犬使いですもんね、猫が苦手だって知らずに勝手なことして。 ホントごめんなさい。今日からふくと私の部屋で寝ますね。」 と申し訳なさそうに言われてしまった。 「え?あ、ちょッ?そういう意味じゃなくて・・・」 誤解を解こうにもはすでにふくを連れて移住の仕度にかかっていた。 たぶん、この時のオレは相当ヒドイ顔をしてたと思う。 帰ったばっかでマスクと額あてでには見えなかっただろうけど。 がこっちに戻ってきてからは、オレの部屋で(オレが任務で居なくても)寝るのが当たり前になってたのに。 の添い寝をゲットするのにオレがどれだけ苦労したかわかってんのか。 ・・・・あのくそ猫。 元々感じていたイライラに、先ほどからのとふくのやりとりでさらにイライラが加速する。 ちょっ、ちょっと!!! ガタッ、とカカシの腰が宙に浮く。 もはやその怒りは言葉にすらならないようだ。 無言でカカシはの隣に座り、忌々しいイライラの原因を指で摘まむと そいつは暢気に「にゃあ。」と鳴いた。 にゃあ、じゃないでしょ。 「・・・・オマエ、調子のりスギ。」 イライラが声に出ているのが、自分でもわかる。 「あの、すみません。カカシさんの読書の邪魔でしたよね。」 やっぱり大人気ないような気がして、放してやろうとふくを見た。 その顔が、猫なんだけどどこか挑戦的というか見下してるというか。 とにかくもう動物相手だけど オレ、正直我慢の限界超えちゃったみたい。 ムカつく猫を投げ捨てて、 オレはの細くてわりと白い首筋に吸い付いた。 ザマーミロ、はオレのなの。 「カカシさん?!!!」 拒絶する前に、びっくりしすぎて反応出来てないは名前を呼んだだけだった。 「マーキングしといたから、これでふくも・・・・」 犬くさくて簡単には近寄ってこないでしょ。 って言葉はに届く前に何処かに行ってしまった。 「あ、・・・・」 涙をいっぱいに浮かべた瞳で立ち上がりオレを見下ろしたは、 なにも言わず小走りで視界から消えて行った。 パタン、と玄関が閉まる音が響き我に帰って足元を見ると取り残されたふくがいる。 「にゃあ。」 人間の言葉にしたら、あーあ。とでも言いそうな。 「・・・・えー、オレのせい?」 聞いてもプイッ、とそっぽ向かれてふくは一度も振り返らずにの部屋へと入って行った。 今度は正真正銘1人置き去りにされたカカシ。 「あぁー・・・やっちゃった?オレ。」 にゃあともワンとも返事がない代わりに、自分のため息がやけに響いて聞こえる。 「やっぱ猫とは相性最悪だな。」 呟きながら、出ていった愛しい恋人を追いかけるため玄関に向かう。 がまんしてたのはオレばっかだけど。 それでもゴメン、って謝りたくて。 ・・・やっぱとことん犬属性なのね、オレ。 犬VS猫 ムサシは緊急避難所にて待機中ですw |