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ゆらゆらと、 左右にゆれるロウソクの炎のように。 静かに そっと 想いはくすぶり、己を削ると知っていながらも ずっと。 消せずにいた。 炎は想いに揺らめいて いつだっただろう。 大人ばかりの中にいたオレに後輩が出来て。 そのオレたちの間にもう1人、歳が近いという女が入った。 それからは当たり前のように、全てが一緒だったあの頃。 「出来たよ、カカシ。」 「ん、ありがと。テンゾウ、これ。」 「あ、はい。先輩、ありがとうございました。も、・・・チャクラ大丈夫そう?」 「ん〜まぁ、このくらいならヘーき。」 暗部である面をつける3人は、先ほどテンゾウを庇いわずかに手傷を負ったカカシをが手当てするのと同時に 無事任務を完遂し里へと帰る前に少しの休息をとるため、暖かな風が吹き抜ける木々の間に身を潜めていた。 「ま、オレもこのくらいなんともないよ。だから、テンゾウそんな顔すんじゃないよ。」 面を外し、その瞳をわずかに細めながらカカシはテンゾウにむかってそう言った。 「・・・僕まだ面つけてますし。」 「バーカ、オマエが今どんな顔してるかなんてバレバレ。」 テンゾウの苦し紛れのツッコミも、長年付き合ってきた目の前の先輩にはちっとも通用しない。 「そーだよ、テンゾー。カカシがあそこで飛び出してなかったら今頃あんた慰霊碑行きよ。」 同じくも、己の面を外しながらそう言った。 「すいません、僕のせいで2人にめいわ・・・」 テンゾウがそう口にしようとしたその瞬間。 バコッ、と言う音と共にテンゾウの頭にの固く握られた拳が降り下ろされた。 「イッ・・・?!!、なんで!」 「だからあんたはバカなのよ、バカテン。」 頭を押さえながら、テンゾウは痛みに堪える瞳で今度は隣にいるカカシを見た。 「迷惑なんて、今さらでしょー。テンゾウ、そんなさみしーこと言わないの。」 テンゾウの頭をなでながら、カカシは「ねー。」と言ってその隣にいるを見た。 「そうだよ、こういう時は」 「ありがとう。・・・だよね?」 の言葉を遮って、テンゾウはようやく面を外して2人にお礼を言った。 そんなテンゾウに、 はわかってるじゃない、と満足そうに笑い カカシはそんなと目が合うと嬉しそうに、そっと微笑んだ。 そんな2人の姿にテンゾウは安心して、下を向いてわずかに口元を緩める。 いつしか当たり前になっていた3人。 ずっと。 出会った時など忘れてしまうほどに、昔からお互いを知っていたような感覚。 笑いあって、支えあって。 命を預ける心地よさを、それぞれがそれぞれに感じていた春。 この距離が、空間がいつまでも続けばいいと思いながらも。 それぞれが己の内に秘めた、チリチリと次第に燃えゆく炎を揺らめかせていた。 それからしばらくの月日がたち、少年少女だった3人は体つきも立派な大人へと成長していた。 「どう?」 ターゲットを目の前に、偵察から戻ったテンゾウにが話しかける。 「やるなら今日、ってとこかな。どうです、先輩。」 隣に並ぶカカシを、テンゾウは目線はそのままに声だけをかけた。 「そーだね。今日はちょうど新月だし、殺るなら今夜丑三つ時ってとこかな。」 「「了解。」」 隊長であるカカシの指示により、それまでの時間を交代しながら各々身体を休めた。 はターゲットの命を奪う前に、わずかな時間をつくって近くの川へやってきた。 チャプン。 そっと手を入れると、川の冷たさがしみる。 頭がはっきりとしてくる。 その感覚が、最近のには必要不可欠だった。 ・・・特に暗殺任務の時は、なおさら。 はそのまま思いきって、川へと頭を突っ込みしばらくそのままの態勢でいた。 「っぷは・・・ハァ、ハァ・・・」 隣に置いたはずの手拭いに手を伸ばすと、乾いた草の感触と同時に頭に探していた布がフワリ、とかぶせられた。 「最近よくやるよね、ソレ。」 「あれ、カカシ?」 全く感じられなかった気配。 今までこんな風に気配を消して近づいてきたことがなかった分、は驚いた。 ・・・どうしたんだろう。 「あの、・・・」 がカカシを見ようと顔をあげようとした時、かけられた手拭いで頭をわしゃわしゃと拭かれた。 「ちゃーんと拭いとかないと、風邪ひくよ。」 「う、うん。」 左右に揺れる頭。 布越しに伝わるカカシの手のひらは、温かい。 「カカシ、・・さ。あんまアタシらの前でも面、外さなくなったよね。」 「・・・そう?は最近よくこうやって川見つけて、頭突っ込んでるよね。」 「あー、うん。なんか雑念を振り払いたいというか、・・・お清めっていうか。」 「ふーん、雑念ねぇ・・・。」 「・・・っ。ねぇ、」 が顔をあげると、やはりそこには面を着けたままのカカシの顔。 瞳が見えない。 カカシの、・・・・心が見えない。 「なぁーに?。」 本当はアタシの事くらい、分かっているくせに。 だから? だからなの? 「なんでもない。」 「そ。出来たよ、頭。」 手拭いをどけて、カカシはサラサラと手櫛で整えてくれた。 今までに何度も撫でられた頭、とその感覚。 慣れているはずなのに。 どうしてだか、苦しい。 息が、 心が。 「ありがと。」 「じゃあ、オレテンゾウのとこ先に戻ってるから。」 「うん、アタシもすぐいく。」 そう言って消えたカカシの後ろ姿だけを見つめて、はぼんやりと思った。 カカシが最近面をはずさない理由。 聞いてもやんわりとはぐらかす、理由。 アタシがこんな風にカカシを想うから、いけないんだ。 想いを無理矢理とじこめて。 今は目の前の任務に集中しようと、は外していた面をつけ気持ちを切り替えた。 瞳を伏せ、少し長めに息を吐き スッ、とその瞳で前を見据えたころにはしっかりとした瞳で暗部のになっていた。 「ねー。」 任務がない、ある日。 当たり前に隣に居るテンゾウが、自室で横になりながら巻物を読むに話しかけた。 「ん〜〜??なに。」 文字を追うのを止めないに、テンゾウは気にしない様子で髪の毛を自分の指に絡ませながら話を続ける。 「最近、先輩来ないね。」 は、思わず今まで動かしていた瞳を止めた。 3人出逢ってから、任務のない時もの部屋に2人がいることはよくあることだった。 カカシはちょくちょく家に帰っているようだったがテンゾウはほぼ居座っているようなもので、自分で別に家を借りている意味あんのか。とさえ思う。 兄弟とも、家族とも違う。 もっと、血のつながりより もっと 深くて濃いもので、アタシたちは繋がっていると思っていた。 考えこんでいたのはほんの僅かな時間で、すぐになんでもない風を装い返事をした。 「さぁ〜カカシも1人で居たい時くらいあるんじゃないの?」 そう言いながらも。 お互いの気持ちなど、伝わる空気で簡単に読めた。 わかってるくせに。 なんでわざわざ、口にだすの。 ・・・バカテン。 なんでもないようなの横顔を、テンゾウは大きな瞳でしっかりと見つめていた。 その瞳にはこんなにも簡単に、 の心が映っている。 バリバリに任務をこなす3人に、休息などほんの束の間で。 こなしてはまたすぐに次の任務が舞い込む。 「大丈夫、?」 カカシの肩を借りながら、次々とは先の木へと飛び移る。 その隣には心配そうにテンゾウが、同じ速度で移動していた。 「あーうん。・・・あと少しなら頑張れるよ。」 「もうちょっとだ。」 それから、わずかに移動しようやく安全圏へと入った3人はの具合をみようとテンゾウが結界を張りあとの2人もその場に足を止めた。 は、大きな傷は自ら術で止血しその他の軽い怪我はカカシにまかせた。 あらかたの処置を終え、ホッと一息ついたところでそれまで言葉わずかだった3人は今後のことも含めて話をした。 「チャクラ・・・ギリかも〜。」 面を頭の上にずらしながら、は後ろに手をついて星が輝く天を仰いだ。 少しドキドキする心臓を、誤魔化しながら。 そんなにカカシはあきれたような、しょうがないとでもいいたげな様子で。 「コラ、。まだ任務中なんだから情けない声ださないのー。」 「めずらしいね、がそんなになるの。」 テンゾウもと同じように、面をはずしてそう言った。 「・・・うん。」 わからない。 いつも冷静で、 ためらわずに人を殺せていた自分がなぜ。 わずかにあの時ためらったのか。 それから、フォローにはいった2人のお陰で事なきを得たがは僅かに手傷を負い こうして、その回復に大いにチャクラを消費した。 「2人とも、・・・ごめ」 「ストーップ。」 不意にカカシが、その細長い人差し指での唇を押さえた。 「、違うでしょ?」 優しく微笑みながら、そう言ってくれた。 ・・・多分。 面で表情は見えないけれど、今のカカシはきっとそんな顔をしていると思う。 「そーだよ。よく僕に言うくせに、やっぱ今日のはめずらしいね。ね、先輩?」 「あはは、そうだね。」 「むぅーはなへ、てんぞー。」 テンゾウに頬っぺたをつねられ、は目だけで威嚇した。 「なに言ってるか、わかんないし。」 意地悪そうな笑みを浮かべながら手を離すテンゾウに、悔しかったけど言わないのももっと癪な気がして。 「・・・カカシ、テンゾウ・・ありがと。」 「ん。」 カカシは、ようやく面を外して優しく微笑みながら頭をなでてくれた。 「たまには僕がに、貸しつくっとくのもいいかもね。」 テンゾウは自分がつねった頬をツンツン、とやっぱりニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべてつつきながらそう言った。 「あ、」 「「ん?」」 「やっぱなんでもない。」 「なにソレ」「??」 途中で、言葉を止めたにカカシとテンゾウは頭の上にハテナマークを浮かべていた。 久々にカカシの笑ってる顔見た。 それだけで、嬉しくなる自分。 テンゾウは前より、ずっと色んな顔するようになったな。 初めて会ったときは、おっきな瞳に何にも映ってなかったのに。 3人血まみれになりながらも、 その場に流れる空気だけは温かいことが、アタシはなによりも幸せに感じた。 何度目かの春。 3人で迎える春、 最後の。 「・・・それ、本当なの・・?」 いつものように、の家で各々に休暇を過ごしていた昼下がり。 カカシはなんでもないとでも言いたげに、手元の本に視線をやったまま2人に話しをした。 「そんな、先輩!!突然すぎますよ・・・僕らになんの相談もなく、・・ですか。」 「三代目の命令だ。これはもう決定事項なんだよ。」 「蹴るつもりはないってことですよね・・・?」 テンゾウは、隣にいるを見た。 「言ったでしょ、コレはもう決定事項だ。」 「・・・・・・。」 突然の事に、テンゾウはもちろんも言葉を発せずにいた。 『オレは、次の任務をもって暗部を抜ける。』 その後は再び上忍に戻り、下忍の指導にあたるという。 カカシが、アタシたちを置いて上忍に・・・なる? いつまでも驚いている2人に、カカシは読んでいた本をパタン、と閉じて。 「いつまでも馴れ合ってたってしかたがないでしょ。オレは一足先にいちぬけするよ。」 「ごめーんね。」 笑顔ではいるが、その表情はわずかに硬い。 ねぇ、カカシ。 本気で、 そんなこと本気で思ってる訳じゃないんでしょう? そう思いながらも口に出来ないは、隣にいるテンゾウの手を強く握りしめていた。 テンゾウはそんなを、瞳いっぱいに見つめていた。 すむ世界を違えるということ。 もう3人ではいられないということ。 いつまでもとアタシが幼稚に願ったことで、カカシは大人になり表舞台へと去っていった。 カカシが暗部を抜けてから、テンゾウと2人で任務を行うわけにはいかないためチームは新たに編成され 今度は2人増えたフォーマンセルが組まれた。 カカシが居なくなってからも。 相変わらず、テンゾウはアタシの部屋に入り浸る。 居場所を無くしたカカシのいないこの部屋は、 まるで色をなくしたアタシたち2人の心の世界のようだった。 「ねぇ、。」 外では、パラパラと雨が降っている。 こんな日じゃなくてもアタシとテンゾウは、行き場がない。 床にうつ伏せで寝転ぶアタシの背中に頭を乗せて、仰向けで天井を見つめながらテンゾウが話かけてきた。 「なに。」 「僕を選んでくれとは言わないよ。ただ、・・・・隣にいてくれる限り、僕はのそばから離れたりしない。約束する。」 テンゾウはたまに、突拍子もないことを言う。 だから、なんであんたはそれを口にするのよ。 「・・・・バカテン。」 そんなアタシに、テンゾウは天井を見つめながら腕を伸ばしてゆっくりと 何度も、アタシの頭を撫でていた。 最後の任務で顔を合わせて以来、カカシとは一度も言葉を交わしていない。 遠くから見かけることはあっても、声はかけない。 かけれない。 それが、表の世界を生きるカカシと。 裏の世界を生きるアタシの ケジメだと、思ったから。 「どうしたの?」 カカシを見かけた日。 その中でも特に、誰かの命を奪った日が重なると アタシの心はひどく揺れた。 「・・・なんでもない。」 窓の外を見つめながら、ぼんやりとたたずむを テンゾウは腕を引いて、そっと己の胸にとじこめた。 「なんでもなくないじゃない。・・・いつもはこうすると怒るくせに。」 スキンシップが多いテンゾウに、大概は黙って受け入れるも抱きしめようとすると黙って空気で怒る。 24時間風呂とトイレ以外は、ずっと一緒にいる2人だがキスの1つだってしたことがない。 「先輩に、会った?」 「会ってない。」 嘘だね。 が僕に抱きしめさせてくれるなんて、絶対にカカシ先輩が関わってるに違いないんだ。 「もう、寝よ?」 返事がないに、テンゾウは構わず腕をとってベッドへと連れて行った。 どこかぼんやりとする。 ・・・・消えてなくなってしまいそうだ。 テンゾウは怖くなって、を抱きしめた。 なんの抵抗もしない腕の中の、愛しい人は。 その意識はとっくにどこかにいきながらも。 静かに、泣いていた。 テンゾウはカカシが暗部を抜けてから、が無邪気に笑わなくなったことに気づいていた。 どれだけそばにいても、笑って言葉をかけても。 自分が支えようとすればするほど、は涙し謝り許しをこう。 『こんな関係、おかしいよ。』 おかしくないよ。 『ごめんね、テンゾウ。ごめん・・・アタシずるいよ。1人が怖いからってテンゾウをいつまでも縛り付けてる。』 僕だって、1人は怖いよ。 がずるい訳ないさ。 だって僕だって、先輩に置いてかれたを縛り付けて 同じく置いてけぼりをくらった自分を慰めてるんだから。 でも、僕は 僕はただ、に笑って欲しいだけなのに。 「また、ここに居たの?」 テンゾウが、を見つけた先は慰霊碑の前だった。 「カカシの名前、ないから。・・・安心した。」 は先輩が上忍になってから、こうしてちょくちょく慰霊碑に足を運ぶ。 それは、任務前だったり・・・・今日のように早朝、任務明けそのままの足でだったり。 隊長であるテンゾウが、火影に報告をしている間にすぐには待ちきれずに1人ここに向かうのだった。 「そんな簡単に先輩は死なないよ。」 「うん、・・・知ってる。」 「帰ろ、今日はもう疲れたよ。」 うん、と頷いては立ち上がった。 するとふとその視界に、わずかに見慣れた銀色の髪が風になびいているのを見つけてしまって。 「・・・カカシ?」 「え、・・・・先輩?」 2人の声に、慰霊碑の裏に座っていたカカシは立ち上がりその姿を見せた。 「や、2人とも元気?」 その声は、あのころとなんにも変わりがないように思ったが わずかに柔らかく、当時のどこか鋭い気を抜かないような雰囲気はナリを潜めている。 「あ、」 先輩と対峙するは、思いがけない状況に言葉がでないようだった。 そんな彼女を守るように、テンゾウはの隣に並び代わりにカカシへと話しかけた。 「お久しぶりです、カカシ先輩。」 「うん、久しぶり。」 上忍である先輩は、今ではベストを見にまとい面を被らない代わりに額あてでその左目を隠していた。 「今は下忍たちの先生をしているんですってね。」 どこかで耳にした、先輩の情報を僕は口にする。 はやく、 を連れて帰ったほうがいい。 僕は、気持ちばかり焦っていた。 「うん。まぁー・・・ね。のんびりやってるよ。オマエたちも暗部で活躍してるそーじゃないの。」 「うん・・・なんとか、ね。」 は、下を向いたままなんとかそれだけを口にする。 そんなに、カカシは今は指先が出ている手をそっと伸ばしたが 触れる前にその腕はテンゾウにつかまれてしまった。 「ダメです。」 「テンゾー・・?」 あくまでも不思議そうな表情を装って。 本当は、先輩は僕がこうして止めることなどわかっていたくせに。 「先輩は、こいつが・・・・があなたを好きだと気づいたから突き放したんじゃなかったんですか?」 「やめて、テンゾウ。」 なに言うの。 だから、どうしてあんたは・・・。 「やめないよ。どうしてです?散々僕たちのこと避けてたくせに。なんで今になって、僕たちの・・・の前に現れたりするんですか・・・。」 表情は見えないけれど、 はきっと今にも泣きそうになっているに違いない。 だけど。 「オレはね、テンゾウ。3人でいる時間がスゴくスキだったんだ。」 あの時みたいに、僕たちを見る目が優しいものになった。 「すごーく心地よかった。この手が心が血にまみれても、とテンゾウが笑いかけてくれてる限り生きていられると思ったよ。」 「だったら、どうして・・・」 アタシだって、そう思ってた。 きっと、 隣にいるテンゾウだって、そう。 「上忍として表の世界に行こうと決めたのはね、どちらも選べなかったんだ。 をテンゾウに渡すのも、を自分のものにするのも・・・オレにはどちらも受け入れられなかった。」 ごめんね、いつしか面を外せなくなったのは オレがもう暗部のカカシでいられなくなりそうだったからだよ、。 「2人とも大切で、オレの幸せだったから。」 だから逃げたんだよ。 選ばないことで、・・・・オレは現実から逃げたんだ。 「今さら、・・・こんなことって自分でも思うけど。」 いつだって2人に会いたかった。 先輩って、笑っておっきな瞳でオレを見てくれるテンゾウに。 カカシって、無邪気に笑ってオレを見上げるに。 会わないことで、落ち着かせていた気持ちが。 偶然出会った慰霊碑で、 1人、2人を裏切るような形で別れてしまったことに憎んでいるだろうとばかり思っていたのに。 テンゾウとが、今でもオレを オレの名前を呼んで、伝わる空気があのころとちっとも変わらないことに思わず気配を消せなくなった。 カカシはをまっすぐに見据えた。 「オレはがスキだ。 テンゾウも大切な仲間だけど、は仲間以上に大切なんだ。」 あん時のオレは今よりずっとガキで、なんでもわかってますって年上ぶった顔して・・・・失うことに怯えてばかりだったけど。 暗部を抜けて、1人になって初めて気がついたよ。 逃げるだけじゃ、答えはでない。 失う覚悟もないヤツに、本当に大切なものは手に入れられないんだって。 「テンゾウ、オレはオマエを失ってでもが欲しい。」 はカカシのその言葉にハッとした。 自分を見つめる視線に、アタシはカカシの本音を初めて知った。 「カカシッ・・・。」 今でも忘れられない、どれだけテンゾウに優しくされても傾くことがなかった想いが溢れだす。 「アタシだって、今でもずっと・・・カカシが好きだよ。」 その言葉に、カカシは半分安心した。 ・・・テンゾウを選ぶのも、アリだったんだけどね。 だけどもう、迷わない。 心の炎を、カカシは一気に燃え上がらせた。 想いを告げると決めた時から、今度こそ・・・・テンゾウに憎まれる覚悟は出来ている。 「コイツとオレを・・・天秤にかけるようなことしてごめんね、。」 カカシはそっと、の肩に手を置いて隣にいるテンゾウを見た。 「オレは、・・・オマエになら殺されたってかまわないよ。」 その言葉に、テンゾウは今度こそその瞳をいっぱいに見開いて驚いた。 そして 「・・・なに言ってるんですか。僕が先輩をこの場で殺したら、今度は僕がに殺されちゃいますよ。」 笑ってそう言った。 自分はが好きでも、カカシの隣で笑うが好きだということにも。 そんなのとっくの昔に、気づいていたというのに。 テンゾウはの手を握りながら、「を1人に出来ませんから。」とカカシに言った。 そんなテンゾウに、は「バカテン。」と涙ながらにそう言い カカシは「それもそーね。」と優しく笑って言った。 「先輩、勝手に僕を仲間外れにしないで下さいよ。も。」 「え〜でも、たまには2人っきりがいいなァー。ね、もそう思うでしょ?」 「は?しっ・・・知らない///」 突然向いた矛先に、 久々にカカシと2人きりになるなんて、堪えられない!とは幼い少女のようなことを思い1人顔を赤くした。 その後、ひとしきり3人で顔を見合わせて笑った。 この顔を オレは、アタシは、僕は、 ずっと見たかった。 しばらくして2人は晴れて暗部を引退し、テンゾウは上忍となりは医療忍術に優れていたこともあり特別上忍となった。 回り道はしたが、再び3人の笑いあう姿が木の葉のあちこちで見られるようになった。 春の訪れを告げる暖かな風が、3人の間を抜けていく。 あの日の別れの春が 3人の新たな、始まりの春となった。 おまけvv 「ねぇ、テンゾウ。」 「今は、ヤマトです。」 「・・・ヤマト。」 「なんです、先輩?」 ふと、手元の本から視線をあげるとぴったりとくっつきよりそうとテンゾ・・・じゃなかったヤマトがいる。 「なんでそんなに、くっついてんの。」 カカシのその言葉に、も読んでいた資料から顔をあげ向かい側にいるカカシを見た。 「別に・・・、昔っからテンゾウはこうだったよ?」 そういうに、隣から「だから、ヤマトだって。」というつっこみが入る。 いや、そんなことはどーでもよくて。 なんで恋人のオレを差し置いて2人で、イチャイチャしてるワケ? 「あ、先輩もしかして嫉妬ですか〜?」 ニヤニヤとしながら、ヤマトはさらにを抱き寄せた。 「ちょ、バカテン!!それはなしって言ってるじゃんか!」 それは? のその言葉にも、カカシはピクっと反応した。 「別に、ずっと2人でくっついてたんだしそんなに変わらないでしょ。今までだって一緒に寝てたじゃないか。」 寝てた・・・・だと? さすがに、その発言は不味かったらしい。 無表情で2人の元に近づいてきたかと思えば、テンゾウの反対側、つまりのとなりに腰掛けた。 「あのな、はオレのもんだ。」 無理矢理、の肩を抱き寄せ無言でテンゾウに視線を送る。 先輩・・・顔綺麗な分、無表情で怒ると怖いな。 でも、 今まで散々を泣かせた事は、僕まだ許してないんですからね。 そんな2人には少し困ったような表情を浮かべながらも、カカシの腕の中でクスクスと笑っていた。 「バカテンとバカカシ〜〜。」 「ちょ、。バカテンは分かるけどバカカシってなによ?!」 「、だから僕はもうテンゾウじゃなくってヤマトなの!!」 大人になったとばかり思っていた3人の関係も。 こうして並んでいると歳もナリも、 立場が変わっても それぞれの心は、あの時と同じだった。 ちょっと以外だったのはカカシって結構子どもっぽい? ・・・でも、さすがに千鳥だすのはやめたほうがいいんじゃないかなー。 って、テンゾウも木遁忍術だしてるし・・・。 もう、アタシしーらない。 どっちも好きだし、・・・ね? すみません、バカテン呼ばわりな上にバカカシってw 8000を踏んでくださったshirasu様に捧げますv リク内容は『カカシ先生とテンゾウ(ヤマト隊長)の取り合いみたいなのが読みたいですv』とのことでした。 イメージ的に、藤田麻衣子さんの「二人の彼」という曲をご希望でして。 初めて聞いてみたのでう〜〜ん、切ない系ですか・・・・と何度も聞きながらイメージを膨らませてみたのですが(汗 こんな感じでいかがでしょうか。 カカシ先生と隊長に挟まれるかんじでしたので、第二部が舞台でもいいかなーとも思ったのですが やっぱり切な系には、若いお2人でしょう☆ということで、暗部が舞台です。 子どもながらに、孤独を知る隊長と 暗部にいながらも無邪気に笑うヒロインに、それを優しく見守るカカシ先生・・・をイメージしつつ。 あんまり曲に忠実すぎてもなぁ〜と、そこは勝手に最初の設定のみであとは好きにやらしてもらいましたw (っていうか、カカシ先生の年上・テンゾウの年下設定すら危うい・・?) すみません、shirasuさん(汗 せっかくのステキな曲を汚したような気もせんでもないのですが・・・・。 もう、リクいただいての暴走は毎度お決まりとでもいいますか(汗 だからって調子にのんなよって感じなのですが(ぐはぁ ラストは、ずっと暗い感じだった分一気にギャグテイストに走ってしまいましたw 楽しかった〜vvvって毎度のことながら、時間軸がめちゃくちゃなのはどうかご勘弁を・・・完全なるオリジナル世界です(汗 それでは、shirasuさんこの度は8000hitおめでとうございますv これからも雨音をどうぞよしなに(^^)♪ |