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オレが、子どもだからか。 オマエの生徒だからか。 ぶっこわしてェ、ッてのも オマエにしてみればガキのすること以外のなんでもないんだろうな。 午前1時すぎの駆け引き 時刻は深夜1時すぎ。 腕時計を確認した清春が立っている場所は、 どうしてだか彼の担任であるのマンションのドアの前。 「ククク、アイツ寝てんダローなァ。」 本来なら、いち生徒が担任の教師の元を個人的に訪れる などということは簡単に許されることではない。 しかし、それはそれ。 清春とは実は恋人同士なのである。 いつものイタズラ心半分、最近なにかと忙しいへの拗ねた気持ち半分。 だとかなんとか言いながら、結局はB6に、その中でも特になにかとオレサマに甘い女教師に 甘えたいだけなような気もしないでもない。 だけど、そんなコッパズカシイこと素直に言えるワケがなくて。 キヨハル様のアリガターイ奇襲ぅ〜〜とか、言って誤魔化すつもりでいる。 清春は、ズボンにぶら下がっている鍵束の中から こっそり作ったの部屋の合鍵を取り出すと、物音をたてないようにそっと中へと滑り込んだ。 部屋の電気は消えている。 なれたように、ベッドのそばまでくると そこには何も知らずに穏やかに眠るが。 ブチャのやつ、まんまと寝てやがるゼ。 ニヤニヤと、自分でも口の端があがっているのが分かる。 着ているものを1枚脱いで適当にその辺へ置き捨てると、 布団をめくり迷わずの隣へともぐりこんだ。 しかしの穏やかな寝顔をいざ目の当たりにすると、途端にイタズラ心がしぼんでいく。 相変わらず、気づきもせずに眠りこけるの髪をすきながら 人前ではめったに見せない、男のようなそれでいて子どものような 素直な笑みをこの時の清春は浮かべていた。 「全身にラクガキでもシテやろーと思ッてたンによォ。」 こんなに安心した顔されちゃア、ンな気にもなんねェっつーの。 反応がなきャオモシロくねェーしな。 しばらくの寝顔を見つめていた清春だったが、 そのうち訪れた睡魔にゆっくりとまぶたを閉じた。 しっかりと、その腕の中にを閉じ込めて。 ―ピピッピピピピ 「ん、・・・んぅ〜〜。」 眠い目をこすりながら、はいつものように目覚まし時計に腕をのばした。 「なに・・・ちょっと、重い・・・・。」 拘束するようにからまった腕を、どかしながらなんとか目覚ましを止める。 ・・・・・重い? 嫌な予感で一気に脳が覚醒すると、寝汗ではないなにかが頬を伝う。 恐る恐る振りかえると、 そこには教え子であり、個人的な言い方をすると恋人でもある清春の姿が。 「なっ、ななななっ・・・??!!!」 思いっきり動揺する。 そんなただならぬ姿に、さすがの清春も起きた。 「・・・くァ・・・おはよーブチャ。」 「なっなんで、清春くんがここにいるのよ?!!?」 動揺するなどおかまいなしな清春は、 ん〜〜〜っとその場で伸びをした後、下にある頭にポンポンとのせる。 「なンでッて、そりゃアーオレッサマがオメーの彼氏だからに決まってンダロ。」 「はぁ?そんなの答えになってません!」 「べッつに泊まるくれェ、イーじゃねェか。減るモンでもねンだしィ?」 「減るわ!!!」 キッ、とあくまでも厳しい表情で対応する。 学校ではよくあるものの、 プライベートな時にはさすがにが本気で怒るようなイタズラをしない清春。 今回も恥ずかしがって怒るくらいはすると思ったが、そうやってからかうのも楽しみのうちではあるし と、思っていたのに突然の大声に、さすがの清春も少したじろいだ。 「・・・ンッだよ、ンーなに怒ることカヨ?」 「分かってない、清春くん。自分がしたことがどういうことか、全然分かってない。」 「あぁ?」 「やっと・・・少しずつ積み上げてきた信頼とか、努力がみんな減ってちゃうのよ?」 の言う言葉の意味がまるで理解できない。 しんらいィ? どりょくぅ? ンなモンが欲しくて、補習受けてるワケじゃねッての。 「もう二度とこんなことしないで。」 「・・・なンでだよ、オレはオマエの彼氏じゃなかったンかよ。」 納得がいかなくて、イライラがつのる。 だけどそんなオレの様子なんて頭にはいらないくらい、は必死みたいで。 「そうよ、だけどその前に私の大切な生徒です。」 「はァ?」 「受験だって控えてる。せっかく周りにも認められ始めてる大切なこの時期に安易な行動はやめた方がいいわ。」 「なンだ、それ。」 「私は清春くんのために言ってるのよ。」 オレサマのため? 誰がそんなモン望んだ? こんな時に教師ヅラしてンじゃねェよ。 ・・・・・マジでムカツク。 「ッケ、あーあーそーかよ。くっだらねェ・・・・勝手にしろ。」 「清春く、」 「帰る。じゃあな、先生。」 「あ、学校!・・・・ちゃんと来るのよ」 とっさにそう言ったが、清春くんは無言のまま立ち去っていった。 パタン、と閉じたドアからいつまでたっても視線が外せない。 私はたしかに清春くんの彼女。 だけどその前に担任として、やるべきことがあると思う。 教え子とこんなことになっておいて、今さらそんなの都合がいいって清春くんは納得してくれないだろうけど。 だけど受け持ちの生徒と朝、部屋から一緒に学校に向かうのは 清春にとって、絶対によくないと思う。 せめてあと少し、卒業するまではって・・・思うじゃない。 私はどうなったっていい。 もしなにかあった時に、清春くんが悪くなる状況だけはどうあったって避けなければならない。 清春くんにはまだまだこれから先があるんだもの。 汗を流して、楽しそうにバスケをする清春くん。 なんだかんだ文句を言いながらも、机に向かって勉強する清春くん。 1つ1つに、その先の未来が透けて見えるようで。 いつもその姿を眩しく思って、見つめていた。 「そうよ、私のことだって・・・・一時の気の迷いかもしれないし。」 大学生になってみて、やっぱり私みたいなオバサンなんかより 歳も近い可愛い子がイイって思うかもしれないじゃない。 言ってて自分で悲しくなってきた。 は、さっきまでそこにいた清春の かすかに残るぬくもりに、思わず倒れこむ。 「私、・・・本当に清春くんの彼女でいてもいいのかな?」 一方、早朝で人気もまだまだ少ない通り道。 機嫌の悪さをあからさまに態度に出す清春に、まばらだがすれ違う人たちの誰もが道を開けていく。 アリえねぇ!ブチャのやつ。 卒業までなんて待てるかッつーの。 アイツはオレの彼女だぞ。 オレッサマだけのオモチャなんだ。 なのに、いつまでたってもB6連中はブチャにちょっかいかけやがるし。 アイツはアイツでいつまでたっても、どこか生徒扱い。 おまけにT6の連中も、油断ならねェ。 どいつもこいつも、マジでムカツク。 「オレは生徒の延長じゃ満足できねェンだよ。」 結局、その日は清春くんは学校には来なかった。 もっと別の言い方があったんじゃないだろうか、とか 最近補習以外で顔を見てゆっくり話をすることも少ないから ああやって清春くんが実力行使に出たんだと思うのに、 私はあんな風な態度しかとれなかった、とか 考えだしたら落ち込むばかりだった。 だけどそれはそれ、これはこれ 教師である以上そんな理由で授業を疎かにする訳にはいかない。 1つ空いた席を時折ため息とともに見つめながら、 はその日をすごした。 清春が学校に来ていないことと、にどこか元気がないことで なにかあったに違いないとすばやく感じたB6のメンバーがあれこれ心配をしたが 声をかけても私がなんとかするしかないの、と苦しそうに笑うだけだった。 帰り道は、1人肩を落として帰った。 本来ならあるべきはずの補習も、本人が欠席ならしかたがない。 休み時間に電話もメールもしてみたけど、反応ゼロ。 「・・・・このままダメになるのかな。・・・・」 呟くようにして玄関のドアを開け、後ろ手に閉めようとした。 すると、 「ンーなワケあッてたまるかヨ。」 「・・・ぇ?」 声がして、後ろを振り向くとそこには朝この場から出て行ったっきりの清春くんが。 眉間におもいっきり皺をよせて、不機嫌そうに立っていた。 「勝手に入ると子豚教師がブヒブヒウッセーからな。・・・・帰ってくンの待ってた。」 「え、あ・・・・。」 驚いたのと、あっさり否定されたので うまく声にならなくて、しばらくその場に2人突っ立ってたけれど 結局は中に入ってもらうことにした。 謝らなくちゃ。 机を挟んで2人、沈黙のまま向き合って座る。 「ねぇ、清春くん。」 「あん?なンだ、ブチャ。」 「ブチャはやめてって言ってるじゃない!2人の時くらい・・・・名前で呼んでよ。」 「あぁ?めんどくせーンだよ。先生つけろッつったり、名前で呼べッつったり。 ・・・・あげくのはてにはいつまでたってもオレサマを生徒扱い。」 朝の延長のように、結局はそこにたどりつく。 私は、清春くんを傷つけた。 清春くんのためだっていいながら、本当は自分が傷つくのが怖くて。 ずるい、私はずるい。 「・・・ごめんね。」 「なにが。」 言いたいことはたくさんあるはずなのに。 すぐには、言葉に出来ない。 私が黙っていると、距離を縮めて覗き込むように清春くんは私を見た。 「ッたく・・・オイ、。」 その視線が、怖い。 まっすぐで、はっきりとした清春くんの瞳。 受けとめるのも失うのも、今さらどっちも怖い。 「あのね?あの、たとえ話しはあんまり好きじゃないんだけど・・・・。」 「オイ、オレサマは焦らされンのが好きじゃネェんだよ。言いたいコトがあンならハッキリ言え。」 「たとえば・・・たとえば、よ?その・・・補習の担当じゃなかったら私のこと好きにはならなかったと思う?」 はァ? まーたなに言ってやがンだ、コイツ。 黙っていたかと思えば急にそんなコトを言い出すに、イラつきを隠せない清春。 「そうかもな。」 瞳をまっすぐに向けて、真剣にそう言ってやる。 だってよ、オカシイじゃねェか。 朝に散々ケンカしといて生徒だとか、教師だとかまだそんなコト気にしてるなんて。 ましてや、今のオレの気持ちを疑うときた。 ふざけンじゃネェ。 今さらこんなにスキなヤツ、手放せるかッつーの。 「・・・ッたく、オメェバッカじゃね。」 追い討ちをかけるように、言葉を重ねるとついにの瞳から涙が溢れた。 だけど、コイツはいつだってそう。 自分のことは後回し。 「そっ・・・か。あはは、そうだよねぇ。補習がなかったらほとんど一緒にいないもんね。」 わかってネェ。 ホンッッッット、マジでわかってネェ。 ムカつきすぎて、思わず抱きしめた。 「ンなコトどーだっていいダローがよ。 つーか、泣くくらいなら初めッカラ聞くな。バァーカ!」 「だ、だって」 「・・・オマエに泣かれッと、どーしていいかわかんねェンだよ。」 「ぁ、・・・の。清春くん?」 腕の中でもごもごと何か言っているみてーだけど、この際の意見は全部ムシ。 オレサマを動揺させやがッた、バツだ。 「確かに、オレらのきっかけは補習で今でも教師と生徒なのには変わりはネェ。 けどな、そンなに大事か?立場とか、きっかけとか理由とか。 人スキになンのに理由なんかいらねぇ。 んなモン考えてるヒマがあンなら1秒でもオマエの顔がみてぇと思うし、声が聞きてぇって思うのが当たり前ダロ。」 「生徒とか先生とか、ンなモン知るかッてンダヨ。オレッサマにはどーだってイイ。あるのは、・・・・」 「オレは今、この世でだけを愛してる。それだけだ。」 それでもまァだ不安かよ? 耳元から清春くんの甘い声が響く。 「清春くんは強いね。」 「アホ。強くなンかねぇよ、バァカ。」 「なっ、なによそれ。清春くんのこと褒めたんじゃない!」 「ウルセェーよ。ンなほめ言葉いるか!ほめるならちッたァーマシなこと言えッつーの。」 抱きしめられながら、ほっぺをつままれる。 「え?たとえば?」 「あん?バスケ姿がたまらなくカッコイイ、清春くんvとか、 そんなイタズラ考えつくなんて、てんさーいvvとか、たくさんあンダロ。」 あごを掴んで、つねった部分に今度はキスをしながらそう言った。 本当は、オレだって思ってる。 強いフリをして、気にしないようにイタズラで隠して。 手のかかる生徒じゃなかったら、見向きもしなかった? ガキで、つまんねぇとか思ってる? オレがもっとはやく生まれていたら、・・・・・なァーんてな。 「なァ、オレも1つ聞いていいか?」 「ん?なーに?」 「オマエはどー思ってンだよ、オレサマのコト。」 久しぶりに、このニヤニヤを見た気がする。 そういえば清春くんがこの顔するのは、絶対に意地悪なこと考えている時。 「正直に言わねェとキスすンゾ。」 「へぇ?!あ、・・ぅ・・・・そ、りゃあー・・・。」 「あ?」 「すっ、・・・・・・スキ、だよ。」 「あぁーん?聞こえねェなァ?」 清春くんの顔が一気に近づく。 「だから!・・・スキだって、・・・・言ってるじゃないの///」 思い切ってそう言うと、今までニヤついていた顔に途端に表情がなくなる。 「なっ・・・なによ。」 「オレサマもスキだ。つーか、すッげースキ。」 心臓をそのまま鷲づかみにされたみたいにドキドキするような笑顔。 そのまま見とれていたら、結局はキスされた。 「正直に、言ったのに。」 「あー?なンだよ、して欲しくなかったンか?」 「・・・・そんなんじゃ・・・、ないけど。」 「オメーもたいがいスナオじゃねェよなァ〜〜。」 「・・・・清春くんは自分に正直すぎよ。」 「ホラ、よくゆーじゃねェか。たで喰う虫がスキスキィ〜〜ってナ。」 「それを言うなら”蓼喰う虫もスキズキ”!!!しかも使いどころ微妙に違います!」 「キシシシ、似たヨーなモンダロ。気ィすんなァー。」 その後もじゃれあいのような言い合いを続けて、私たちは夕食を食べた。 (私が作るって言ったんだけど、今日は時間も時間だから 出前でいいって清春くんが言い張るからピザを注文した。) 「今日、泊まるカラな。」 「・・・・でっ、でも。」 「バァーカ、先走るなッてェの。よーく見さらせ〜〜。」 清春くんが、ポケットから一枚の紙を取り出し広げるとそこには、 『仙道清春の外泊を許可します。』 「仙道・・・・きよあき〜〜〜???って清春くんの弟さんの?」 「オゥヨ、仙道家の良心ッてくらいだからコイツの許可があればいいダロ?」 得意げに、清春くんはその紙をヒラヒラと私の前にちらつかせる。 う〜〜〜ん、たしかに日頃の清春くんの筆跡とは違うけど・・・。 でも、どこかでみたことがあるような・・・・?? 判断に困りながらも、その日は清春を部屋に泊めることにした。 コレは翼が書いたもの。 今日学校には行かなかったが、時間を見計らってバカサイユには顔を出していた。 「カベ・・・・ヤベェ、マジで大変なコトになった。」 「なんだ、清春。どうした?」 翼が計画中の卒業旅行に、保護者の許可がないと認められないと学校の規則で決まっている。 しかし、両親・兄弟ともに簡単に会える状況ではないため代わりに一筆書いて欲しい と口からでまかせに清春がそう言うと翼はなんの疑いもせずに素直に協力した。 「上がったゾ、。」 先に風呂に入ったが髪を乾かしていると 後ろから来た清春が、飲み物を机に置いて、ドライヤーをとりあげた。 「なに?」 「ちょっとコッチこいよ。」 向かう先にはベッドのみ。 「清春くん!」 「オマエはオレッサマのオモチャなんだ、黙ってしたがってりゃイーんだよ。」 「ちょ、・・・ちょっと!!」 キスをしようと、の唇めがけて顔をさげると 電気を消したワケでもないのに突然視界が暗くなった。 「その前に、今日サボった分の補習!!!受けてもらいますからね。」 ・・・・オレの顔を押さえつけていたのはプリントだったらしい。 挙句の果てに、6割とれなかったらオアズケだなんて。 コレって、泊まる意味あンのか?! ブチャめ・・・・覚えてろヨ!!!!! 本編とはちがって、在学中に付き合ってる設定でした。 それはそれで萌える・・・www 久々なキヨに悪戦苦闘しましたが、楽しかったです。 |