舞い降りたのは、天使か。
それとも女神か。


いいや、ちがう。


潤んだ瞳と、

可愛らしい姿はまるで。


捕らえたい、ボクらのうさぎ。






そんなあの子はうさぎさん






幼い頃までの記憶。金髪に人懐っこい笑顔はかわらずにいるだろうか。

以前住んでいた街の記憶は、だいたいが新しい土地のものに塗り替えられてしまっていたが。
ただ唯一頭のすみに残るのが、近所に住んでいた金髪の同い年の男の子。

よく笑って、同じくらい泣いて怒って、と忙しかった彼。

別れ際は、涙をこらえながらも見送ってくれたっけ。



『俺ってば、男だから泣かねー!!、誰かに泣かされそーになったらいつでもいえよ!俺がぶっとばしにいってやるってばよ。』

ありがとう、ナルトくん。
でも遠いところだから、きっと私が泣いててもこれないよ。


だけど、一生懸命なナルトくんにそんなこと言えなくて。


『だいじょうぶ、私強くなるから。ナルトくんがそばにいなくてもへいきな女の子になるよ。』


約束。

そう言って、私はナルトくんと指切りげんまんをした。
最後のほうは結局ナルトくん、泣いてたっけ。



「懐かしいなぁー・・・。」



古い記憶を呼び起こしながら、
引っ越しの作業をあらかた終えたは懐かしい街並みをとぼとぼと歩いて回った。



今日からまた、この街に住むのね。


せっせと動いて回る母を思い浮かべて、は記憶に浸るのもそこそこに再び家に戻った。


「どこ行ってたのよ、。荷物、部屋に運んでもらったからあとは自分でしなさいよ。」

「はーい。」

新しい、与えられた自分の部屋を少し見回して。
は自分の城を築きにかかった。


新しい学校、・・・ナルトくんがいたらいいな。


高校など、たくさんあるこの地域に
思い出の彼がいるなどというそんな都合のよいことがあるとは思えなかったが。


それでも、なんとなく。
は彼と再び出逢えるような、そんな予感がしていた。





「聞いたかよ?」

「なにがー?つうか、お前ってば挨拶もなしに朝イチそれかよ。」


「あ?じゃあ、おはようナルト。」


キバは朝の挨拶もそこそこに、教室の机に今しがた座ったナルトの前にドカリと座る。

「じゃあってなんだよ、じゃあって。」

そんなキバに、しぶしぶ応じながらも話の続きが気になるナルトは先を促した。


「で、なんだってばよ。」

「それがよ、さっき職員室の前を通りかかったら・・・。」


口元に手をあてて、ひそひそとナルトの耳にキバは続きを囁いた。
「転校生がきたらしーぜ。しかも、チョーカワイイ女の子。イルカ先生と話してたから、多分ここのクラスだぞ。」


秘密裏にしているわりに、大した内容ではない。


「ふぅん。べっつにィ〜俺ってば、サクラちゃんにしかきょーみねぇーし。」


そんな態度が気にくわなかったのか、キバは立ち上がってナルトを見下ろす。


「ケッ、んだよ人が親切に教えてやったってのに。後から何言っても俺は聞かねェからな。」


ドアに向かうキバに、ナルトはひらひらと手だけ降ってみせて。
それを横目に見た不機嫌そうなキバに、ちょうど教室に入ってきたシカマルがすれ違い様話しかけた。


「キバ、さっさと教室戻んねーとまた紅せんせーにどやされっぞ。今、教室入ってくの見えた。」

「ぅわ、マジかよ。サンキュー、シカマル!」


バタバタと、隣の教室に入っていくキバ。
出張も大概にしなさい!とハリのある紅の声がこの教室まで聞こえてくる。


「あいつもよくやるよなー。」

「あァ、シカマルおはよ。」

近づいてきたシカマルに、首だけを後ろに向けてナルトは挨拶をした。

「転校生ってホントーなのかってば?」

「あ?まー今に分かんじゃね。ホラ、」

シカマルが席に着くと同時に、教師らしい声が教室中に響いた。


「はい、皆席につけー。」


中央の教卓にたどり着くと、シカマルのやる気のなさそうな号令で皆が一斉に立ち上がり、礼をして再びガタガタと椅子につく。

「おはよう、今日はHRを始める前に新しい仲間を紹介するぞ。」

その言葉にクラス中が、一斉にざわめき立つ。
イルカは先ほど入ってきたドアをあけ、廊下にいる人物に声をかけて教卓へと伴った。


ざわめきがさらに強くなる。


「今日からこのクラスの一員になる、さんだ。さ、簡単に自己紹介して。」


は急に自分に視線が集まったことに、戸惑いながらも少し息を吸って声にした。
クラスメイトである人たちの顔を見る余裕など、もちろんない。

です。幼いころこの辺に住んでいたのですが父の都合でまた戻ってきました。どうぞよろし、」




「あー!!!!」



「・・・なんだ?ナルト、知り合いか?」

ガタッ、と椅子を倒す勢いで立ち上がりこちらに向かって指をさす金髪の男子生徒が1人。
イルカは、突然の大声に迷惑そうに眉間に皺をよせて見つめていた。

はその声の主を自分も見てみようと、それまで俯いていた顔をゆっくりとあげた。


そしてその視線の先には、もちろん。



「・・・・ナルト、くん?」


そうだったらいいのに、が現実になる感覚。

見知らぬ中で1人、馴染みの姿を見つけた嬉しさと安心。



って、あの泣き虫のか??!!」


久々に会って泣き虫はない、と思う。
・・・もうそんなに簡単に泣いたりしないし。


はさらに恥ずかしくなって、でもなんにも言い返せずに顔を真っ赤にして再び下を向いてしまった。



嘘のようなホントの展開に少々面食らいながらも、こうしての新しい高校生活は幕をあけた。




「・・・まさか、ナルトと知り合いだったとはなー。ここ、視聴覚室な。」



現在隣を歩くのは、切れ長の瞳に黒髪を高めに結った少しダルそうなクラスメイト。

「前に住んでた時に近所だったから、・・・よく一緒に遊んでたんです。」

「へぇー・・・こっちが図書室。っつーか。」

奈良シカマルと名乗った男子生徒は、図書室と説明したまま扉の前で急に足を止めた。



「奈良くん?」



も同じくその場に足を止めて、少し上にある顔を不思議そうに見上げる。


初めて奈良くんの顔をまじまじと見た気がする。
・・・かっこいいなァ。


「あのなぁ〜俺らタメだろ。しかも、クラスメイトになんで敬語なんだよ。」

「・・・いや、それは。その・・・」


がシカマルに敬語を使うのには、今二人が並んで歩いていることに原因があった。


HRが終わろうとしている最中、その場を仕切っていたイルカから
学級委員長であるシカマルが休み時間に校内を案内するようにと指示があった。


「はぁ?・・・なんで俺なんだよ、めんどくせェ。・・・んなもん、顔見知りのナルトに頼めばいーんじゃないッスかね、イルカせんせ。」

シカマルは窓の外を見ながら、首に手をあててめんどくさそうにそう言った。


「そーだよ!イルカせんせー。俺がに隅々てーねーに教えてやるってばよ!」

「ナルトは黙ってろ。お前だと、時間配分考えずに必要もないところをあちこちつれ回すだけだろーが。」

「そーよ、しかもあんたじゃとんちんかんな説明しかできなさそうだしね。」

ナルトくんの隣に座る桃色の髪の女の子が言う。

「ちょ、サクラちゃーん。そりゃないってばよ〜。」

ナルトの情けない声でその場には笑いが起こったが、はさっそくあてがわれたナルトの後ろの席で1人下を向いていた。


奈良くん、学級委員長だからってだけで休み時間が潰れるなんてそりゃ面倒以外の何物でもないよね・・・。


そんな事があり、申し訳ない気持ちと少々取っつきにくい彼の雰囲気もプラスされ
同い年であると知りながらも、は思わずシカマルに対して敬語を使ってしまっていた。


「せっかくの休み時間が私のせいで潰れてしまって、・・・面倒かけてしまいましたから。その、・・・すみません。」


下を向いて謝るに、シカマルは少々面食らっていた。



「あー・・・。」



シカマルは、首に手をあてながらちょっと困った風にしている。

「なんだ、その。俺のめんどくせェっつーのは口癖みたいなもんでよ、まぁ〜・・・気にすんな。」

「そう・・・なの?」

恐る恐る奈良くんの顔を見ると、照れながらもニカっと笑う姿があった。


「気ィ使わせて悪かったな。」


とっつきにくいと思ったけど、奈良くんて案外優しくて面倒見がいいのかも。


「あと俺の事はシカマルって呼べよ。奈良くんなんて、なんかムズムズする。」



「・・・シカマル、くん?」



それでいいのか、が首をかしげて名を呼んでみると
本当は、くんもいらねーんだけどな。と シカマルは少々照れながらもあさっての方向を向いてそう言った。

「じゃあ、私の事も下の名前で呼んでくれる?」



「下の名前って、・・・・、か?」



早くも友達が出来たことが嬉しくて、は自然といっぱいの笑顔でちゃんとシカマルの瞳を見て頷いた。

「うん!これからよろしくね。」





まるでそこに花が咲いたような感覚に、シカマルは今度こそおもいっきり照れた。



やべェ。

なんか、コイツ・・・・かわいい。




学校案内を再開しながら、シカマルは持ち前の冷静さを取り戻してと会話を楽しんでいた。

「来てそうそうあれだけどよ。」

「ん?」

「この学校めんどくせーことに、全生徒がどっかの部活に所属しなきゃなんねーんだよ。」


ホント、めんどくさいって言うの口癖なんだね。


話の内容を頭にいれつつも、初めに言われた口癖だというのが事実であることがわかり
は心の中でクスクスと、笑っていた。

・・・が。


全員強制かぁー・・・、困ったな。

どの部活動も、それぞれに雰囲気というものがあり
一年の半分を過ぎたこの時期では、ほとんどの部がその結束を固めつつあるだろう。

だから、はこの学校ではどこの部にも所属しないつもりでいたのだ。


「どうした?」

「うーん、私前の学校で部活入ってなかったから。・・・どうしようかなーって、思って。」

「あーまぁ、他は自由なとこが多いだろーからな。中学ん時はなんかやってなかったのかよ?」

「中学校の時は吹奏楽やってたんだけど、」


「ど?」


「うん、吹奏楽って団体競技でしょ?今さら入っていくのって簡単にはいかなさそうだなーと思って。」

「あ、ここ化学実験室だから。めんどくせーことに、大体がそーかもしれねェな。特に女だと尚更そーいうのややこしかったりするもんなァ。」


あっさり肯定されてしまった自分の考えに、憂鬱さがやや増す。


「シカマルくんは、なに部なの?」

「俺か?俺は囲碁部。」


「・・・・囲碁部。」

それってなんだか。


少し間が空いたことに、シカマルはの言いたいことを悟り眉間に皺を寄せた。


「お前じじくせーとか思っただろ。」

「ううん、違うよ。」

あっさりと否定され、じゃあなんだ。と読めないの心境にシカマルはさらに眉間の皺を増やした。



「シカマルくんていまどきなカンジなのに渋くてかっこいいんだなーって、思ったの。」



「・・・・・・。」


「ん?」

「やっぱなんでもねー。」


先ほど見たの笑顔と、今の言葉に。

シカマルの眉間に刻まれた皺たちは、あっさりとどこかに消えてなくなっていった。


「シカマルくん?」

少し歩幅が大きくなったシカマルに、は頭にはてなを浮かべて。


「ホラ、さっさと次行くぞ。」

でも、そう言われればは小走りにシカマルの後姿に追いついていくのであった。



シカマルの案内を終え、授業の合間に次の準備をして席に座っていると
さっそくが部活について迷っているのを聞きつけたのか、ナルトが後ろを向いてしきりに誘った。


「なーなー、!!お前、部活どーすっか迷ってるんだって?」

「あ、・・・うん。」


今朝方、久しぶりに会ったのに全然そんな感じがしないのは
ナルトくんのくだけた人柄のおかげでもあるのだろう。

「だったらよ、俺んトコこいよ!」

「ナルトくんのとこ?」

男女一緒ってことは、文化部かなにかだろうか。と、とっさには思った。

でも、ナルトくんて見るからに活発なイメージだけど。


「そ!サッカー部。俺ってば、プロのサッカー選手になって世界中のヤツらに俺のこと認めさせるのが夢なんだってばよ!!」

「へぇ〜すごいね、夢がちゃんとあるって・・・でも私一応、女だよ?」


「ナルト!あんた言葉たらずな上になにいきなり自分の夢語っちゃってんの、意味不明よ。」


今朝も、ナルトくんに突っ込んでいた桃色の綺麗な髪の女の子が斜め前から話に加わった。

「あ、はじめまして。私、春野サクラっていうの。」

かわいらしい笑顔で、にっこりと私に自己紹介をしてくれた。

「よろしく、・・・えーっと」

「サクラでいいわよ、だから私もって呼んでいい?」

「うん、よろしくね。サクラちゃん。」


また1人、友達が増えた。
次々と出来ていく友達に、の表情は自然とほころんでいた。


「ちょっと〜2人とも、俺をほったらかしにしないでくれってばよ。」

「あぁ、ごめんナルト。あんたの存在なんてすっかり忘れてた。」

すっぱりと切り捨てるサクラに、は朝のように緊張がない分素直にクスクスと笑う。


「あの、サクラちゃん。さっきのナルトくんのってどういう意味?」

「そーそーそれね、ナルトが言いたかったのはサッカー部のマネージャーになってくれないかってことよ。」


・・・・マネージャー?


「そうそう、それ!さっすが、サクラちゃん俺のことわか、」

ナルトくんの発言は、隣からのサクラちゃんのひと睨みのために途中で途切れてしまった。

「去年まではいたんだけど、その人卒業しちゃってね。
 今は臨時でどうしてもって時だけ私がかけもちしてるんだけど、いい加減私も自分の部に専念したいところだったのよ。」

「そうなんだ〜。ちなみに、サクラちゃんはなに部なの?」

の問いかけに、サクラは目を輝かせて右手で握りこぶしをつくってみせた。


「私?私は空手部よ!」


意気込むサクラちゃんを横目に、ナルトくんは口元に手を添えてこっそりと私にこう言った。


「サクラちゃん怒らすと、マジこえーから。も気をつけた方がいいってばよ。」

「ナルト〜?なんか言ったかしら。」

パキパキと、サクラの両手からははやくもなにやら物騒な音が聞こえてくる。
あわや大惨事かと思いきや、運よく授業の開始のチャイムがなり程なくして教師が前のドアから教室へと入ってきた。


、さっきの本気で考えといてくれってばよ。俺、またお前と一緒にいれたらすげー楽しいと思うからさ!」

授業を始めだしている先生に、注意されながらもナルトくんは最後にそう言って前を向いた。



サッカー部のマネージャーかぁ・・・。


先生の話などすっかりお構いなしに、はナルトに言われた言葉を繰りかえし頭の中に浮かべていた。




本日最後の授業である化学を受けるために、は1人で残り少ない休み時間に校内をうろついていた。


「やっぱり2人に待ってもらえばよかったかなぁ〜・・・。」


トイレに行くと言ったに、サクラも付き添うと言ってくれたのだが
待たすのもなんだか悪いと思い、荷物と共にナルトと先に行くように言っておいたのだ。


今日シカマルくんに案内してもらったばっかりなのに(涙


一向に見つからない化学実験室を捜し求め、はうろうろと廊下を行ったりきたりしていた。
すると、無慈悲にも授業の開始の合図がそこら中に木霊する。


あぁぁ〜・・・・。
どこ?ドコなの、化学準備室〜〜〜。

元々方向音痴のである。
加えて私立の立派なつくりであるこの木の葉学園は、転校生であるを迷わせるには十分の広さだった。


しばらく途方にくれていると、非常階段の踊り場にふと人影が目に入った。



???
誰だろう、・・・・とっくに授業始まってるのに。


私と同じ、迷った人でもいるのかな?


そんな訳はない、と誰かこの子に突っ込んでやってほしい。


気になってそっと近づいてみると、目線の大分下の方で小説を片手に
たちと同じ制服ではなく、少しよれた淡い水色のシャツに黒のスラックスをはきマスクをしている男の人が1人静かにたたずんでいた。



「なーに、キミもサボリ?」



気づかれていないと思っていたはふと上げられた視線と、
マスクを介しているはずなのに、驚くほど耳に心地のよい低音の声にドキっとしてその場で動きを止めた。

「あ、いえ。・・・あの、私化学実験室に行きたいんですが迷ってしまって・・・その。」

今日初めて訪れた校内に、地理感がないのは別に恥ずべきことではない。
しかし、なんとなく恥ずかしくなって最後の方はほとんど聞き取れないような声で目の前の人物にそう告げた。


「化学実験室なら、ここをまっすぐ行った階段を下りた3階を右に突き当たりまで進むと着くよ。」


言われながら頭に地図を思い浮かべてみたが、尚更混乱した。
ブツブツと、口にだして繰り返してみたがたどり着ける自信などどこにもない。

しかし、いつまでもこの場にいる訳にもいかずお礼を言って立ち去ろうとしたを男は引き止めた。


「その様子じゃ、たどりつけそうもないね。オレが送ってってもいーけど、・・・・ま、ここ座る?」

そう言ってポンポンと叩いて見せたのは、隣の空間。


そこに、私が・・・座るの?


心配しているであろう、ナルト達の様子が浮かんだが今さら教室に入っていくのも勇気がいる。
だったら、後から先生にお説教されたほうがマシかな。なんて、は自分の中で結論づけてストン、と隣に座った。


そんなの様子に、男はどこか嬉しそうで。



「なに、読んでるんですか?」

黙っているのも、なんだか気後れでパッと目に付いた小説を話題に話しかけてみた。

「ん?コレ?あー、まぁキミにはまだ早いかな。小説とか普段読むの?」

読んでいた本を静かに脇にやり、隣に座るを首を傾げて見つつ男は質問を質問で返した。

「割りと、好きな方では・・・あります。」

「おーなんだ、イマドキのジョシコーセーにしちゃエライね。」


褒められたんだろうけど、なんだか小バカにされているような感覚がするのは気のせいだろうか?


「ってことは、文芸部の子とか?」

「いえ、あの。・・・友達に勧められたので、サッカー部のマネージャーになろうかと思ってます。」

一瞬ピクリ、と目の前の男性は反応したような気もしたが
すぐになんでもない風を装ったので、は自分の気のせいだと思った。


「へぇーサッカー部のマネージャーね。大変だよ?部員にこき使われて体力勝負なとこあるし、キミ見るからに文化部っぽいけど。」

「大変そうだとは思います。でも、」

「でも?」



「夢に向かって頑張る姿を応援したい人が出来たんです。私なんかが大したこと出来るとは思ってませんが。
 ・・・・その人の夢が叶うまでの道のりにそっといれたら、私にもなにか見つかるんじゃないかって。その、思ったんです・・・けど。」



「ふーん、いいんじゃない?」

「え?」

少し否定的な印象だったので、つい想いを口にしてしまったが
こうもあっさりと受け入れられるとも思っていなかったは、少し拍子抜けした。

「ま、頑張ってみたらいーんじゃないかな。夢に向かってるアツイヤツって、結構キミらの年代の子には眩しかったりするしね。」

「は、はい。」


案外、それも事実だったりする。

今のにはこれといって夢や目標が存在しない。
ぼんやりとした将来の自分像はあっても、ナルトのように熱く語れるような夢などは見つかっていないのだ。


昔のナルトくんも、いっつも私の前に立っていたけど。
結局高校生になっても、それは変わらないんだな。


今日1日、後ろの席から眺めていたすっかり大きくなっていたナルトの背中を思い浮かべて。
の心は、じんわりと広がる温かい気持ちでいっぱいだった。




「私、やってみます。サッカー部のマネージャー。」



今までの、どこかオドオドとした表情はどこへいったのやら。
しっかりとした決意を秘めたハリのある瞳で、見つめられたことに男は内心驚いていた。


へぇ、おもしろそーな子がきたモンだ。


「ま、そのちょーしでね。じゃあ、オレ戻るから。」

パンパン、とお尻をはたいて隣で立ち上がるのを見ては慌てて下から呼び止めた。


「あ、あのッ。」


「ん?なぁーに。」

「あの、・・・・ここの先生・・・ですよね?私のこと、怒らないんですか?」


今さらだが、自分の置かれている状況に気づいた探り探りのの様子に苦笑しながらも。

「怒ってほしーの?」

その言葉に、はブンブンと頭を横に振る。


「こんなんだからあんまり教師に見えないかなぁ?キミ、今日きたばっかの転校生でしょ。別にいーんじゃないの?
 初日からあれこれ大変でしょーよ。ま、こんなんだからよく上に怒られるんだけどね。」

「ってことは、」



「はたけカカシ、2年生を中心に数学を教えてるよ。以後よろしくー。」



「はたけ・・・先生。」

「んーオレとしては、そう呼ばれるのはあまりスキではないかな。」

「え?じゃあ、あのなんて呼べば・・・?」

先生は、私の前にしゃがんで目線の高さを同じにした。





「カカシせーんせvって呼んでほしいなー。」




「は?え、・・・えーっと。」

からかわれてるんだろうか。
なんだか、最初っからこの先生にはからかうような様子が時折垣間見える。


「んー?どした?顔が真っ赤だぞ。」

「か、・・・」

「か?」


「カカシ先生の顔が近いからですッ///!!!」



思わずそう言ってしまった私に、カカシ先生はクスクスと笑っている。


「なんだ、オマエちゃんとおっきい声出せるんじゃないか。」

「へ?」

「これからは、アイツらの前でもそーやって腹から声だしてけ。」

いつの間に、私たちの様子を見たんだろうか。

不思議がるなどお構いなしに、カカシは「いーこいーこv」と言って頭をなでている。


あの、私そこまで子どもじゃないですよ///??


それでもなんだか撫でられる感触が心地よくて、されるがままになっている。



「じゃーな、。」



今度こそ、立ち上がってカカシ先生はその場を去ろうとした。

あれ?でもカカシ先生、なんで私の名前・・・・。

「あ、ついでに言っとくと。」

少し離れた後に、くるりとカカシは振り返った。

「なんでしょう?」





「オレ、キミの担任のせんせーだからv」





HRはちゃんと出ろよーと言う声が、遠くに聞こえる。


「・・・・ぅええぇええ!!???!」

が叫ぶ声と、授業が終わりを告げるチャイムの音が鳴るのはほぼ同時だった。


だって、だってイルカ先生が私のクラスの担任なんじゃなかったの?!?!


なにかと遅刻しがちな担任に、いくら言っても聞かない副担のイルカ先生がしびれをきらして朝のHRをこなしているうちに
担任と副担の仕事がすっかり入れ替わったおかしなことが平然と成り立っているということを、は後から知ることとなる。



教室に戻りHRを終えると、案の定ナルトくんとサクラちゃんにどうしたのかと思いっきり心配されてしまった。


ってば、丸々いないからすげー心配だったんだぞ?!」

今にも、つかみかかりそうな勢いだ。

・・・ナルトくん、近い(汗

「ちょっと、落ち着きなさいよナルト。」

そんなナルトくんをバシッ、とはたいてサクラちゃんが助けてくれた。

「あ、ありがとう。サクラちゃん。」

「いいのよ。でも、いったい1限丸々ドコにいたの?さすがにちょっと心配したわよ。」


2人に問い詰められれば、正直に答えるしかない。
が口を開こうとした、次の瞬間。



はオレと一緒にいたんだよ。」



廊下側の窓から、ひょっこりと顔を出したのはまさかのこのクラスの担任であるカカシ先生。



「「「カカシ先生!」」」



突然の登場に、三者三様に驚きをみせる。


「や。」

「めずらしい、もうHRは終わったってばよ。」

「ん、知ってる。オレだって時計の見方くらいはちゃーんと知ってるんだぞ、ナルト。」


カカシ先生の発言に、ナルトくんは小声で「どーだか。」と言っていた。

「にしても、せんせー!!一緒にいたってどーいうことだってばよ。」

説明しろ!とナルトくんはしきりに言っている。

「どーも、こーも担任が受け持ちの生徒捕まえて話聞くののどこが悪い。
 は今日入ったばっかの転校生だぞ?1日どうだったかそりゃー気にするだろ、普通。」

「・・・・せんせーの口からそんな普通の教師の発言が出るとは思わなかったってばよ。明日は雨だ!雨!!」

「さすがに、それは失礼よ。カカシ先生だって一応教師なんだから。ねぇ、先生?」



あのー・・・サクラちゃん、それフォローになってませんけど?


斜め後ろで、3人のやりとりを見ながらは内心この教師が怒り出しはしないかとヒヤヒヤしていた。
しかし、そんな失礼なはずの生徒の発言も。

カカシ先生は、「オマエらなァー。」とちょっと困ったような顔で見ているだけだった。


カカシ先生って、ちょっと変わってる?



「ところで、どうしたんですか?あ、サッカー部のことでなにか?」

カカシが現れた理由を、サクラは思い出して本来の話に戻した。


「せーかい。新しいマネージャーを迎えに、ね?」



「「新しいマネージャー??」」


2人の声がキレイにハモった。
かと思えば、今度は2人同時にこちらを向いて。


!お前やっぱりマネの話、受けてくれたんだな!!」
、ありがとう!これで私も空手部をインターハイへ導けるわ。」


私の手をとって喜ぶ様子に、なんだか自然と嬉しくなってチラ、とカカシ先生のほうを見ると
先生もあからさまではないにしろ、目が嬉しそうに弧を描いていた。



あ、せんせーのちゃんと笑った顔・・・初めて見た。



いつの間にか、そのマスクの下の笑顔も見てみたいと思っている自分には少し驚いた。


「にしても、お迎えって??」

「いやー、もしもグラウンドまで迷うといけないと思ってね?」

見えないけど、マスクの下は絶対にニヤニヤと口元が笑っているに違いない。

別にそんな笑顔は、見たくないんですけど。



そうしてサクラと別れ、準備をしてくるといったナルトとも一旦別れはカカシに連れられ職員室であれこれと説明を受けた。


「今日は、体操着持ってないだろーから。皆にあいさつだけして、あとは練習見ながら仕事とか。ま、色々説明するね。」

「はい。」

は早くも気合十分だ。

「あ、これ一応ルールブック。分かりにくいと思うから、サッと目ェ通しとくぐらいでいーよ。あとはオレが追々教えてあげるから。」

渡された本は、結構年期がはいっていた。


グラウンドに着くと、早くも準備を終えたナルトくんたち部員が一同勢ぞろいしていた。

「カカシせんせー!!おせーってばよ。」

「すまん、すまん。今日は新しいマネージャーをエスコートしていてな?」



「・・・・せんせーがエスコートとか言うとなんかやらしーってばよ。な、キバ?」

隣にいた、同じくサッカー部員のキバにナルトは話を振る。

「し、知るかよ!俺に聞くな。」


そんな部員たちには、お構いなしにカカシはを簡単に紹介した。


「2年のです。サッカーのことは全然わからないんですけど、頑張ります。よろしくお願いします。」


ぺこり、と頭をさげるにはやくもほんのり顔を赤くする男子が数名。
・・・その中に、キバやサスケもしっかりと入っていたとかいないとか。



「ハイハイハイ!!!いっつも、練習にこねーカカシせんせーがなんで今日はの教室にまで迎えに来て。そんなのおかしいってばよ!」

さっそく皆の前で、質問を投げかけるナルトに内容が内容なだけに周りが反応する。

「先生、こいつのことわざわざ迎えに行ったのかよ!普段ほとんど部活に顔見せないのにか!?」

キバはナルトから、さっそくがマネになることを聞かされて浮かれていたため
隣のクラスに居てもその時の様子は知らなかった。

少し気になるに、さっそくライバルの影が見えて焦っている。


教師だって、男だぞ!!!?


「それどころか、このカカシが今日は練習にもずっと居る気でいるみたいだぞ・・・。」

ポツリ、と端から発言したのはサスケ。

「げ!マジかよ。せんせーってばどういう風の吹きまわしだ??」


「ん〜〜?それはー・・・・ねぇ?」


カカシ先生はそれまで部員の男の子たちを見ていたのに、突然こちらを向いてさりげなくウインクをした。


〜〜〜〜〜/////


からかわれているのだと、わかっていてもはそのしぐさに思わず顔を真っ赤にしてしまった。


まただ。

・・・・・だってなんか、カカシせんせーってかっこいいんだもん。・・・ちょっとイジワルだけど。


頬を染めるに、野生の勘で2人の微妙な雰囲気を悟ったナルト。


「そんなの、ダメだ!!!せんせー、それって職権らんよーだってばよ!」





「そーいうのはちゃんと漢字で言えるようになってから言え、ナルト。」




カカシはマスクの下、困ったように口端をあげておりその隣には新しく入った可愛らしいマネージャーが。
これからそのマネージャーの隣を獲得するのは、はたして誰なのでしょう。

当の本人は、一緒に楽しそうに可愛らしく笑っています。




新しいマネージャーと共に、ますます騒がしくなったサッカー部。
そんな部員たちのドタバタ恋愛話と、カカシせんせーが大人な恋心に気づくのは


どうやらもう少し時間がかかりそうですv












Vanilla Creamの楓さんに捧げますv

いかがでしょうか、こんなカンジで(汗
色々とお世話になったお返しに、とリクを承ったはいいのですが・・・・。


カカシ先生後半にしかでてこないってばよ〜〜(涙


にしても、非常階段で授業の合間にカカシ先生と2人っきり・・・ワタクシなら完全に押し倒(すみません、だまりますw
ホントは隊長にも登場していただきたかったのですが、あまりにも長くなりそうだったので泣く泣くカットです。
でも、書いてて楽しかったですv
以前お話させていただいた、学園化の要素は連載にできた時にでも追々・・・(えへへvvv


なんだかまだまだ不完全燃焼ですが、こんなのでよければ貰ってやってくださーい!!
ではありがとうございました。楓さん、大スキですー。

これからも、こんな時雨ですが仲よくしてやってくださいねvv