あなたとこれからも
この新しい世界と一緒に…。









よ醒めないで








人混みをかき分け、走る後ろ姿。

それを見たとき、何をそんなに慌ててるのか分らなかった。



、俺の恋人。



恋人と言っても、 には男性に触れられない、触れたくないという思いが拮抗し、

自由にならない心と体、それがあっても俺は を想い続ける。



お互い忍、そして両想いの末にやっと得られた少しの幸福。


俺は、そんな をいつも愛おしく思う。



「カカシ、手…つなご?」

「ぇ、いーの?」


「うん、カカシだったら平気だと思う」


そう照れくさそうに話してくれたのは、夏の花火大会があった時だった。

は、任務帰りで砂埃が少し顔に着いてしまってたけど、俺は気にしなかった。

も気にしないで欲しい、そういっていた。

ま、微かに血の臭いがあったから大体予想は付く。それは も同じ。





やっと手を繋げた。

俺は を離したくはない、そんなことを思いながらクナイを握っていたであろう左側の手を

しっかりと握った。







でも、キスや情交には進んでいない、否進むことが出来ない。

を、 を…壊してしまいそうで。



木の葉に訪れる冬。

クリスマス。


俺は、 にとっておきの幸せを用意した。





「カカシ!遅れてごめんー」


「めずらしーじゃない、 が遅れるなんて」


「えへv」


「なーにー?良いことでもあったー?」


「んーん、そうじゃないの。カカシと一緒にクリスマスが過ごせるのが幸せなのっ」



なぁんだ、そんなことか。

それなら…。



「俺だって、同じ気持ち」


「ふふ」


浮かれてる 、あの髪をなびかせ走る後ろ姿は見ていて嬉しくなる。


「あれ、 シャワー浴びてきたの?」


「あ、わかった?」


「うん、そのシャンプーの香りでね」


「やっぱカカシだね、これだけで分っちゃうんだ」


「ま、とーぜんでショ」


「えへへ、カカシに誕生日の時にもらったバスセット、使ったの」



お風呂が好きという変わった好みで、紅が勧めてくれたバスセットを誕生日に贈った。


そして、今日この日につかってくれる…うれしーことするじゃなーいの。



「あ、あのね!」


雪が降る木の葉の町並みをゆっくり歩く俺たち。

の左手を繋いで、ポケットにしまい込んで。


「んー?」


「か、カカシにさ、プレゼントあるんだ」


そんなの俺だってあるさ、俺の左側のポケットに。


「その手提げ?」

「うん、それともう一つ」

「なーに?」

「これから私が行くところ、一緒に来て」



そう言って、ひょいっと屋根に登る。

俺も続けて屋根に登り、 の隣を走る。


さむーい!とか言いつつも、スピードを落とさず、向かい風を受けながら走る。


着いた場所は、火影岩の上の広場。


「わー、やっぱり冬の木の葉は好きだなぁ」

どきっとした。


ホワイトクリスマスで、木の葉もクリスマス一色になっているからだろうか。

笑った横顔が堪らなく、綺麗…。


「どしたー?この景色、カカシと一緒に見たかったの」


「プレゼントの一つ?」


「んーん、違う」


「はい、カカシにプレゼントその1だよ」


指をぴっと立てて、1を表わし手提げを差し出す。


「あけていーの?」


「うん」



中に入ってるのは、綺麗にラッピングされた袋。

買ったのかな?

わくわくしながら、銀色のリボンをしゅるっととく。


「ぇ、これ」


「ふふ。手縫いした枕カバーと、手編みのマフラーだよ」


「ぷっ」


「なによー?」


「だって、枕カバーってお前ねー」


「カカシが倒れてるとき、私看病出来ないこと多いでしょ、任務とかでさ。だから少しでも傍にいるっていう証だよ」


俺の瞳の色に合わせたかのような、左右対称の枕カバー。


左は、灰色のように見える唐草模様、右には赤い千日紅。


白地に刺繍の施されたそれは、時間のない忍には難しいプレゼントのハズなのにねー。


「実は、ギリギリになって糸が切れちゃってさ、刺繍糸を買いに走ったの。そしたら、意外と人混みだから汗かいちゃって」


「それでお風呂に入ったってわーけね」


「うん、そゆこと」



てへっと笑う愛おしい人の笑顔が、消えないで欲しい。

千日紅…、変わらぬ愛情だと が教えてくれた。

でも、雪がこの愛おしい人を溶かしてしまうんじゃないか、そんな錯覚さえ覚える。

そう思ったときには、もう体が勝手に を抱きしめてた。


「カカシ?」


、明日になっても明後日になっても、ずっと消えるな」


「カカシ…」


「俺の前からいなくなるな」


「当たり前だよ」



当たり前、そんな言葉言えないはずのこの忍。

けど、 は言ってのけてしまう。

チャクラ切れで入院する俺を心配して、 が怪我をして帰ってきたこともあった。

でもどんな時でも、お前は俺の前からいなくならなかった。

今度も、絶対?

そんな考えとは裏腹に、 は俺の頬を包み込み呟く。


「私は、カカシとずっと一緒。どんなに離れたってお互いの想いが離れさせてくれない」



お互いの…想い。



「…それから」


すっと口布に手を伸ばし、ふわっと柔らかいフルーツの香りが俺の鼻をかすめ、口にそっと触れる。


…」

「カカシ…、メリークリスマスっ!」



俺は一瞬、思考が止まった。

の唇が、俺の唇と重なって…。

俺はその唇の柔らかさを、その熟れた唇をもう一度、味わいたくて未だに抱きしめたままの のあごをあげ、

もう一度キスを落とす。


今度は、長く深く、ゆっくりとこの感触と幸せを味わい尽くすかのように…。




「んっ」


やっと解放された互いの唇は、呼吸を求める。


「カカシ…、私うれしい」


「俺も」


俺は今しかないと、そう思って に赤と銀の交互に混じり合ったリボンに包まれた物を渡す。


「…あけても、いいの?」

「ん、開けてちょーだい」



ぱこっ、と箱が開きオルゴールが演奏を始める。

シルバーのリングネックレスがはいったオルゴールつきの箱。

俺は、リングネックレスを取り、 の首にかけてやる。


そのリングには、「Whole new world」と刻印されている。


新しい世界…そう教えてもらってアクセサリーショップで刻印を頼んだ。


俺と を繋ぐ世界。俺にみせてくれた新しい世界。


「これ、これって…」


「俺の、愛おしい人。これからもずっと一緒に生きていこう」


「カカシ、カカシ…夢…じゃないよね?」


うっすらと涙を浮かべ、屈託のない笑顔で聞いてくる。


「当たり前でしょーよ」


「うん、うんっ」



「お前がいてくれるから、俺はここにいる。人を愛せる、愛おしいと思うんだ」


「そうね、私もよ。カカシ」


特別なんていらない。


そう言い続けてきた俺に、舞い降りた天使は、雪の降るこの里で、夢を魅せてくれた。




醒めやらぬ、暖かな夢を。


終わることない、優しい愛を。


そして、止むことのない、愛しさを。



「ずっと、ずっとカカシと一緒にこの体が朽ちるまで世界を見るんだ」


「世界を見るの?」


「もちろん、カカシは私の視界から消えない、私が消させない」


「ははっ。頼もしいな」


「カカシは?」


「俺?俺の言いたいこと分ってるでしょーよ」


「俺が死ぬときはお前を殺して俺も死ぬ、でしょ?」


「んー。はずれ」


「え゛、うそ」


「ずっと一緒だよ、


「私も、カカシとずっと一緒」


「ん、ごーかっくv」


そうして俺たちはもう一度口づけを交わす。

その夜の、情交の前のように静かにゆっくりと…。

醒めやらぬ興奮を、キスで表わして、夜のとばりが降りてくる。

静かにしっかりと降り積もる雪のように…。


醒めやらぬ夢と共に…。






雨音の時雨さまに捧げます。

カカシとのクリスマスの愛の夢を、夢が醒めないように願って。

少し、早めのクリスマスプレゼントかも知れませんね。




流れ星の栞の葵 比奈様から、リンクの記念にとステキすぎるプレゼントをいただいてしまいましたvvvv
どどど、どうしましょう(汗
嬉しすぎて悶絶です〜こんなかっこいい比奈さんとこのカカシ先生がクリスマスプレゼントだなんて幸せです!!
比奈さん、ホントありがとうございましたー。
これからもこんなワタクシですが、雨音ともによろしくお願いしますねvv